長崎大学熱帯医学研究所

長崎大学熱帯医学研究所

長崎大学熱帯医学研究所（Institute of Tropical Medicine, Nagasaki University）は、熱帯医学の専門的な研究を行う日本国内唯一の公的機関であり、長崎大学の附置研究所として位置付けられています。長崎市にある坂本キャンパスに籍を置き、ケニアやベトナムにも研究拠点を展開しています。

歴史

この研究所は1942年3月に長崎医科大学附属東亜風土病研究所として設立されました。設立当初、長崎は特有の事情を抱えており、日中戦争を背景に、中国大陸で発生したコレラやチフス、赤痢といった風土病の研究が進められていました。しかし、長崎への原爆投下の影響により、研究所の施設は完成を迎えることができませんでした。それにも関わらず、長崎県に多く存在する独特な風土病の研究が続けられ、特にフィラリアやウイルス病などの調査が進みました。このような背景から、長崎には19世紀からの豊かな医学的伝統が根付いていました。

その後、60年代には風土病の根絶が進む一方で、文部省からの存在意義に対する厳しい評価に直面しました。このため、69年に東アフリカへの調査活動を通じて熱帯感染症の研究への移行を図り、その結果、1967年に熱帯医学研究所として新たにスタートを切ることとなりました。

研究と組織

長崎大学熱帯医学研究所は、様々な研究機関や国際的な協力の下、感染症や熱帯病に対する研究を行っています。主な組織構成は以下の通りです：

• - 病原体解析部門：ウイルス学、新興感染症、細菌学、原虫学、寄生虫学など
• - 宿主病態解析部門：免疫遺伝学や感染生化学、病理学分野
• - 環境医学部門：生態疫学や国際保健学
• - 臨床研究部門：感染症学、小児感染症、ワクチン疫学など

さらに、この研究所は国際的な健康問題にも取り組むため、21世紀COEプログラムやグローバルCOEプログラムを通じて、熱帯病と新興感染症の地球規模での制御戦略を推進しています。

長崎大学熱帯医学ミュージアム

長崎大学熱帯医学ミュージアムは、1974年に設立された熱帯医学資料室を起源とし、資料の整理・保存・展示を目的とした施設です。このミュージアムは、2008年に改称されて現在に至り、熱帯医学の研究成果を広く一般に公開される場所となっています。

長崎大学熱帯医学研究所は、国内外での感染症対策や研究を通じて、人々の健康と福祉に寄与する重要な役割を果たしています。

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