長崎県立西彼農業高等学校

長崎県西海市西彼町に所在する長崎県立西彼農業高等学校は、「西彼農業（せいひのうぎょう）」、「西彼農（せいひのう）」、「西農（せいのう）」の通称で知られる公立高校です。地域社会と連携し、農業分野をはじめとする多様な専門教育を提供しています。

沿革と概要

本校の歴史は、戦後の経済復興と食糧増産が急務であった1949年（昭和24年）に始まります。当時の地域が将来を担う青少年に高等教育を強く求めたことから、長崎県立大村高等学校農業部亀岳分校として設立されました。その後、何度かの組織改編を経て、1963年（昭和38年）に長崎県立西彼農業高等学校として独立。以来、地域農業の発展に貢献する人材を育成し続け、2014年（平成26年）には創立65周年を迎えました。

教育課程と学科

全日制課程を設置しており、時代の変化や社会のニーズに応じた教育を展開しています。2018年（平成30年）4月には学科改編が実施され、従来の施設園芸科、食品流通科、生活科学科の3学科から、食品サイエンス科と生活デザイン科の2学科体制となりました。

改編前の各学科は、それぞれ特色ある学びを提供していました。

施設園芸科: 「君の手で、育てよう植物、触れよう動物」をキャッチフレーズに、施設栽培技術や高品質・省力化栽培に必要な知識・技術を習得。植物や動物に関する専門知識と実習を通じて、農業を担う人材の育成を目指しました。
食品流通科: 「育てる喜び、造る喜び、届ける喜び」を掲げ、作物の栽培から加工、流通、販売までを実践的に学習。食品関連産業で活躍するための知識と技術を身につけることを目的としました。
生活科学科: 「未来へつなぐ知恵あるくらし」をテーマに、家庭に関する専門知識を習得し、生活産業のスペシャリストを育成。資格取得や現場実習、地域貢献活動を通して、豊かな生活を創造する力を養いました。

校訓と教育精神

本校は「自主・合理・協力」を校訓としています。

自主：自ら考え、為すべきことを実行できる。
合理：道理に基づき、理にかなった行動をとる。
協力：教員と生徒が互いに協力し、共に汗を流す中で築かれる信頼関係を大切にする。

また、「生命（いのち）に学び、生命（いのち）を学ぶ」という教育精神に基づき、生命の尊さを学び、育むことの重要性を教育活動全体で実践しています。

校章、校歌、制服

校章は、内海（大村湾）の真珠と、西彼連山を背景に羽ばたこうとする鷹をモチーフとし、若者の意気込みと積極性を表現しています。校歌は福田清人作詞、沖不可止作曲で、農業高校らしい情景が歌われています。制服は男女ともにブレザー型で、学年ごとに異なる色のジャージや体育着が用いられます。農業実習時には専用の作業着を着用します。

学校施設

広大な敷地内には、普通校舎、管理・事務棟、体育館、武道場などの運動施設のほか、農業高校ならではの特別（農業）校舎や専門施設が充実しています。

特別（農業）校舎: スクールマーケット室、食品製造室、農具室、果樹調整室、作物調整室など
温室・ハウス: ドーム温室、果樹温室、草花温室、草花ハウス、養液栽培温室、育苗温室、野菜温室、野菜ハウスなど
* 圃場（農場・田畑）: 学校水田、ブルーベリー園、堆肥舎、豚舎・鶏舎、露地栽培の野菜畑、そして学校そばの「ときわ山」にはときわ農場（流通園、第1・第2果樹園）があり、多様な作物が栽培されています。

教育活動と地域連携

本校では、以下の10項目を重点に教育活動を展開しています。

1. 環境教育・農業教育の推進：ウッドチップや生ごみの堆肥化、EM菌の活用など環境に配慮した取り組み。
2. 食の安心・安全教育の徹底：減農薬栽培、トレーサビリティの導入、地域への食育啓発活動。
3. 地産地消の推進、生徒の経営能力向上：スクールマーケットや移動販売等を通じた実践的な販売学習。
4. 積極的な奉仕体験活動：通学路清掃、地域施設でのボランティア活動。
5. 基本的な農業技術能力の習得：農業鑑定競技や農業技術検定への挑戦。
6. キャリア教育の推進：インターンシップ、農業大学校・先進農家視察、進路相談会。
7. 農業教員の質的向上：研修への参加、農業改良普及センターとの連携。
8. 地域貢献、地域連携、地域共生：準絶滅危惧種ハマボウの保護、西海市と連携した遊休農地活用研究、SBC菌を活用した畜産研究、食育活動。
9. 開かれた学校の推進：成人向け食農教育講座、小学生対象の農場体験会「学童ふれあい広場」の実施。
10. 農業教育の普及活動：地域の保育園や小学校への「移動動物園」や「出前授業」の実施、地域での食育支援。

学校行事と部活動

年間を通じて、入学式、体育祭、農業文化祭、強歩大会、修学旅行など多様な行事が行われます。特に秋の農業文化祭では、生徒が生産・加工した品の販売や研究発表が行われ、地域住民も多数訪れます。部活動も盛んで、ウエイトリフティング部、バレーボール部などの運動部、美術部、放送部などの文化部、そして生物工学部、食品加工部、食物部など、農業・家庭の専門分野に特化した部活動が活動しています。

進路とアクセス

卒業生は就職と進学の双方にわたる多様な進路を選択しています。西海市長を務めた田中隆一氏やハウステンボス社長（当時）の神近義邦氏など、社会の様々な分野で活躍する卒業生を輩出しています。

アクセスは、長崎自動車「亀岳」バス停から徒歩約5分です。国道206号線が近くを通っています。

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