長嶺諸近

長嶺 諸近の生涯と功績

長嶺諸近（ながみね の もろちか）は、平安時代の対馬国で活動していた役人であり、その生涯は対馬国判官代としての重要な任務に集約されます。彼は百済系の渡来氏族に属し、魯の初代君主・伯禽の子孫とされていることから、その出自は歴史的意義を持ちます。

刀伊の襲撃

寛仁3年（1019年）、刀伊の賊が対馬国に侵入した際、諸近は彼の母、妻、妹、伯母、そして従者たちと共に賊船に捕らえられてしまいました。絶望的な状況の中、諸近は自身の運命を左右する大胆な行動に出ました。賊船が帰路につく最中、彼は逃げ出すことに成功し、その後、家族を救出するために、渡海の禁を破って高麗に密出国しました。

高麗での調査

高麗に渡った諸近は、刀伊の正体と捕らえられた日本人の行方について独自に調査を開始しました。彼は、刀伊が女真族に起源がある可能性が高いと考え、彼らの襲撃が高麗の海岸付近の村々から始まっていたことを確認しました。刀伊の襲撃は、日本への進軍を見越して行われていたため、高麗軍も監視していた結果、刀伊の船を迎え撃ち、全滅させることに成功したのです。

家族の運命

しかし、救助された日本人の中には、諸近の家族の姿はありませんでした。母、妻、妹は刀伊によって殺されてしまったのです。諸近は、幸運にも伯母だけは生き残っていたことを知り、彼女と共に逃げ延びた人々の情報を繋ぎ合わせ、大宰府へ報告しました。報告には、救助された内臓石女と多治比阿古見という二人の女性の証言が含まれており、刀伊の正体と捕虜の消息を明らかにする手助けとなりました。

罪とその後

とはいえ、渡海の禁を犯して密出国した諸近は、罪人として禁固刑に処されました。この処分は彼の無私の行動に対する報いではなく、国家の法と秩序に対する重要なメッセージとして受け取られました。その後の彼の足跡については、残念ながら資料が残っておらず不明です。

参考文献と情報源

諸近の事績や彼に関する史料は、『小右記』や『壱岐の風土と歴史』を通じて知ることができ、特に東京大学史料編纂所のデータベースには彼に関する具体的な記録が収められています。記録を探ることで、古い時代の対馬国やその統治者たちの姿を垣間見ることができるのです。

もう一度検索