長征3号B

長征3号B：中国の主力ロケット

長征3号B（Long March 3B）は、中国が開発した大型ロケットで、静止トランスファ軌道（GTO）への打ち上げ能力を特徴としています。1996年に初飛行して以来、数々の衛星打ち上げミッションを担い、中国の宇宙開発において重要な役割を果たしています。本稿では、長征3号Bの歴史、設計、改良、打ち上げ実績について詳しく解説します。

開発の経緯

長征3号Bは、国際的な静止軌道衛星打ち上げ市場の需要に応えるため、1986年に開発が始まりました。長征3号Aをベースに開発が進められ、1996年に初飛行を迎えました。しかし、初飛行時には誘導システムの不具合によりロケットが墜落し、大きな惨事を引き起こしてしまいました。この事故を教訓に、その後の改良が進められました。

設計と特徴

長征3号Bは、4機の液体ロケットブースターを備えた3段ロケットです。長征シリーズの中では最も強力な部類に属し、GTOに5,100kgのペイロードを輸送する能力を持っています。これは、通信衛星などの静止軌道衛星を打ち上げるのに十分な能力です。

各派生型

長征3号B/E

長征3号Bの能力向上型として、2007年に長征3号B/Eが導入されました。この改良型では、第1段とブースターが強化され、GTOへの輸送能力が5,500kgに向上しています。長征3号B/Eは、アフリカ初の静止軌道通信衛星であるナイジェリアのNigComSat-1の打ち上げにも使用されました。

長征3号C

長征3号Cは、長征3号Aと長征3号Bの能力差を埋めるために開発されました。長征3号Bのブースターを2機に減らした設計になっており、これにより打ち上げ能力はGTOで3,800kgに減少しています。しかし、その分コストを抑えられ、中規模衛星の打ち上げに適しています。

打ち上げ実績

長征3号Bとその派生型は、これまでに多数の打ち上げミッションを成功させています。特に注目すべきは、2013年に中国初の月面着陸機と月面車「玉兎号」を搭載した嫦娥3号の打ち上げに成功したことです。また、2018年には2基の人工衛星を同時に打ち上げる「一箭双星」ミッションにも成功しており、その技術力の高さを示しています。2023年8月時点で、長征3号B系統は91回の打ち上げが行われ、そのうち87回が成功を収めています。

打ち上げ失敗事例

長征3号Bは、いくつかの打ち上げ失敗事例も経験しています。以下に主な事例を挙げます。

インテルサット708打ち上げ失敗

1996年の初打ち上げ時、ロケットは発射直後に誘導システムの不具合により墜落し、市街地に甚大な被害をもたらしました。この事故は、ロケットの信頼性に対する大きな教訓となりました。

パラパ-D打ち上げ失敗

2009年には、インドネシアのパラパ-D衛星の打ち上げにおいて、3段目エンジンの不具合により衛星が予定軌道よりも低い位置に投入されました。衛星は自力で軌道修正を行い、目的の静止軌道に到達しましたが、寿命が短縮される結果となりました。

まとめ

長征3号Bは、中国の宇宙開発において重要な役割を果たしている主力ロケットです。その高い打ち上げ能力と信頼性により、多くの衛星打ち上げミッションを支えています。また、長征3号B/Eや長征3号Cといった派生型の登場により、多様な打ち上げニーズに対応できるようになっています。過去には失敗も経験しましたが、その教訓を活かし、技術力向上に努めています。

今後も長征3号B系統のロケットは、中国の宇宙開発において重要な役割を担い続けるでしょう。

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