長征3号

長征3号ロケットシリーズ

長征3号（Chang Zheng 3, CZ-3）は、中華人民共和国が開発した、衛星打ち上げを目的とする三段式の液体燃料ロケットです。1984年の初飛行以来、多数の派生型が生み出され、現在に至るまで中国の宇宙開発において重要な役割を担っています。特に静止移行軌道（GTO）への衛星投入に強みを持ち、通信衛星や航法衛星の打ち上げに広く利用されてきました。

長征3号（原型）

シリーズの先駆けである長征3号は、1984年1月29日に初めて宇宙へと飛び立ちました。主にDFH-2クラスの通信衛星を静止移行軌道へ送り出すために用いられました。しかし、この初期モデルは第3段エンジンの信頼性に課題を抱えており、エンジンの再点火が計画通りに行われない不具合が2度発生しています。通算14回の打ち上げを実施し、うち11回を成功させた後、2000年6月25日のフライトを最後にその役目を終えました。後継機として、第3段を改良し性能を向上させた長征3号Aに、その任務が引き継がれました。

原型機の主な諸元は以下の通りです。

全長: 43.25 m
直径: 3.35 m
総質量: 204,000 kg
段数: 3段
低軌道（LEO）能力: 約 5,000 kg
静止移行軌道（GTO）能力: 約 1,340 kg
* 運用期間: 1984年1月29日 - 2000年6月25日

長征3号A

長征3号A（CZ-3A, LM-3A）は、原型機である長征3号および長征2Cロケットの技術を基に開発された3段式の運搬ロケットです。一般的に、通信衛星や中国独自の北斗測位衛星を静止遷移軌道へ投入する際に使用されます。第3段には極低温燃料である液体酸素と液体水素を使用しており、静止移行軌道への打ち上げに特化しています。フェアリング直径は3mです。

このロケットは、より大型の長征3号Bのコアステージとしても機能します。打ち上げは西昌衛星発射センターのエリア2および3から行われます。1994年2月8日に初打ち上げに成功し、2007年10月24日には中国初の月探査機である嫦娥1号を打ち上げるなど、重要なミッションを担いました。2018年7月時点で、計27回の打ち上げが実施されています。

長征3号AのGTO打ち上げ能力は2,600 kgです。

長征3号B

長征3号B（CZ-3B, LM-3B）は、長征3Aをコアステージとし、その周囲に4本の液体燃料ブースターを追加した、長征3シリーズの中で最も重量のある3段式ロケットです。西昌衛星発射センターのエリア2から主に打ち上げられます。全長は54.84m、コア部の直径は3.35mです。低軌道への打ち上げ能力は11,200 kg、静止移行軌道への打ち上げ能力は5,100 kgに達します。

このロケットは、静止軌道への通信衛星投入において中心的な役割を果たしています。運用開始時、使い捨て型ロケットとしては、ロシアのプロトンに続き世界で2番目に高い打ち上げ能力を誇りました。より重い衛星を静止軌道へ運ぶため、打ち上げ能力を強化した長征3号B/Eが開発されました。

歴史

1986年、国際的な大型通信衛星市場のニーズに応えるべく、従来の長征ロケット技術をベースに長征3号Bの開発が始まりました。しかし、1996年2月14日の初飛行では、打ち上げ直前に誘導系の不具合により機体が傾斜し、打ち上げから22秒後に近くの村に落下するという重大事故が発生しました。この事故により、搭載されていたインテルサット708衛星は失われ、多数の住民が犠牲となりました。

この痛ましい初飛行の後、続く10回の長征3号Bおよび3号B/Eの打ち上げは成功を収めました。2009年には第3段に異常が発生し、搭載衛星（パラパD）を計画より低い軌道に投入する部分的な失敗もありましたが、衛星自身の推進によって目標軌道に到達しています。

長征3号Bは、長征3号B/Eを含めて、2023年8月時点で91回の打ち上げが行われています。

長征3号B/E

長征3号B/E（Enhanced、強化型）は、長征3号Bの打ち上げ能力向上を目指して開発されました。第1段および液体ブースターを延長することで、静止移行軌道への打ち上げ能力を5,500 kgまで強化しています。

2007年5月13日に初めて打ち上げられ、アフリカ初の静止衛星であるNigComSat-1の軌道投入に成功しました。2008年にはベネズエラの通信衛星ヴェネサット-1の打ち上げにも使用されています。

特に、2013年の嫦娥3号月探査機の打ち上げに際しては、さらなる改良が加えられました。誘導システムに衛星航法信号が追加され、信頼性が向上。飛行中の分離イベントなどの映像を生中継するためのロケットカメラが搭載されました。エンジンおよび制御システムの信頼性も向上し、月遷移軌道への投入能力が若干強化されました。打ち上げウィンドウを拡大するためのソフトウェア改修や、第3段の加圧システム改良も行われています。

長征3号C

長征3号C（CZ-3C, LM-3C）は、長征3号Bから派生した3段式ロケットで、長征3号Aと3号Bの間の積載能力の空白を埋めるために設計されました。長征3号Bが4本のブースターを持つに対し、長征3号Cは2本の液体燃料ブースターを備えています。打ち上げは西昌衛星発射センターの射点2から行われます。

2008年4月25日に最初の打ち上げが行われ、データ中継衛星である天鏈1号を軌道に投入しました。その後も、2009年4月25日には測位衛星Compass-G2、2010年1月16日にはCompass-G1、2010年7月2日にはCompass-G3といった測位衛星の打ち上げに用いられています。

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