長楽寺 (京都市)

長楽寺について

長楽寺（ちょうらくじ）は、京都市東山区円山町に佇む時宗（遊行派）の寺院です。山号は黄台山で、円山公園の東南に位置し、その美しい境内からは静寂で落ち着いた雰囲気が感じられます。本尊は准胝観音で、ここは洛陽三十三所観音霊場の第7番札所でもあります。

歴史の紐解き

長楽寺の創建は、延暦24年（805年）にさかのぼります。勅命により最澄が延暦寺の別院として設立したとされています。特に、文治元年（1185年）のことです。当寺を訪れた建礼門院（平徳子）は壇ノ浦の戦いを経て法然の弟子、阿証房印西に出家を願い出ました。以降、長楽寺は多くの信者に支持されるようになり、法然の弟子、隆寛が住んで多念義を唱えたことから、長楽寺義と称される流派も生まれました。

時が経つ中で、長楽寺は1385年に時宗の僧国阿により中興され、時宗の寺へと改められました。しかし、1745年には江戸幕府の第8代将軍、徳川吉宗によって境内の広大な土地が没収され、この境内地は真宗大谷派の大谷祖廟（東大谷）に寄付されることとなります。その結果、長楽寺は衰退の一途を辿ることになり、文化年間に浄土宗西山派に改宗した時期もありました。しかし明治時代には再度時宗遊行派として復活を遂げることとなります。

また、当寺では1871年に政府によって境内地を再度没収され、その土地は1886年に円山公園の一部として整備・利用されることになりました。近年、長楽寺は1906年に七条道場金光寺を合併し、重要文化財の時宗祖師像7躯もその伝統の一部として現在保存されています。

本尊と文化財

長楽寺の本尊は准胝観音で、特別な機会に開帳されるため一般の参拝者が直接見ることは難しいです。この観音像は立像として彫られており、1面3目の形状を持ち、二匹の龍の上に立つ姿は多くの信者に愛されています。伝説では、最澄が唐から帰る際に海の難に遭遇した時、観音が現れて救われたとのことです。

普段は後水尾天皇の中宮、東福門院によって寄進された「泰安の厨子」の中に厳重に安置されています。本尊の脇には、最澄作とされる弁才天像や布袋尊像も併せて安置され、文化的な貴重さが伺えます。

長楽寺の境内には、安土桃山時代に建てられた本堂や1579年に造られた鐘楼、重要文化財に指定された木造智真（いっぺん）立像など、多くの見所があります。また、相阿弥が手がけた庭園は池泉観賞式庭園として美しい景観を持ち、訪れる人々の癒しとなっています。

行事とおもてなし

長楽寺では年に一度、扇祈願会（もみじ祭）が11月下旬に行われ、参拝者は特別な祈りを捧げることができます。このような行事を通じて、長楽寺は地域社会の精神的な支柱としての役割も果たしています。

訪れる際は、京都市営バスまたは京阪バスを利用して、八坂鳥居前から徒歩でアクセス可能です。歴史あるこの寺院は、深い信仰の源泉とその美しい文化財が多くの人々を惹きつけ続けています。

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