長沢松平家

長沢松平家：複雑な歴史を持つ松平氏の庶流

長沢松平家は、徳川将軍家と深く関わる傍流ながら、複雑な歴史を持つ松平氏の分家です。三河国宝飯郡長沢（現在の愛知県豊川市）の長沢城を拠点としたことからその名がつきました。十八松平の一つに数えられ、その系譜は、松平信光の十一男である親則を祖とするのが通説です（異説あり）。

長沢松平家の歴史は、栄華と衰退、そして傍系の繁栄というドラマチックな展開を見せます。

輝ける時代と断絶：松平康忠と松平忠輝

家康の従弟にあたる松平康忠は、数々の戦功を挙げ、徳川十六神将の一人として名を馳せました。しかし、康忠の子・康直が嗣子なく病没したことで、家督相続の問題が生じます。家康は、七男の松千代を養子に迎え入れましたが、松千代が夭折したため、今度は六男の忠輝を養子として家名を繋ぎました。この忠輝こそが、長沢松平家の歴史を大きく変える存在となります。

忠輝は一時的に家門の繁栄をもたらしましたが、元和2年（1616年）、異母兄である徳川秀忠によって改易され、長沢松平家は断絶の危機に瀕します。

傍系の隆盛と幕臣としての存続

忠輝の改易後も、長沢松平家の血筋は残っていました。しかし、幕府の正式な承認を得るまでには長く、享保4年（1719年）になってようやく長沢松平家として認められ、天保5年（1834年）には十人扶持の禄を与えられて幕臣となりました。幕末には、当主の松平忠敏が浪士組の取締役を務めるなど、時代の一端を担っていました。

大河内氏との複雑な関係

長沢松平家において特筆すべきは、大河内氏との関係です。摂津源氏を起源とする大河内氏から養子を迎えたことで、家系は大きく変貌を遂げます。松平正綱が大名として取り立てられ、その甥である信綱は、松平伊豆守家として大いに栄え、本家よりも名声を博しました。そのため、江戸時代における長沢松平家といえば、この大河内氏を祖とする傍流を指すことが多いのです。しかし、正綱や信綱は「長沢松平家の傍系へ入嗣した大河内氏」であり、長沢松平家の直系および傍系は、これとは別に存続していました。

傍流の活躍

忠輝に仕えた傍系の松平清直は、忠輝の改易後浪人生活を送りましたが、後に将軍家に召し出され、所領を与えられました。その子孫は、後に断絶しますが、清直の弟である正世の子孫は越前松平家に仕え、松平主馬家として存続しました。この家系の分家筋である松平正直は、会津征伐での功績により華族（男爵）に叙せられ、明治以降は要職を歴任しました。さらに、越後長岡藩牧野家の家老・今泉家も長沢松平家の庶流であると伝えられています。

系図とまとめ

長沢松平家は、複雑な養子縁組や分家、そして大河内氏との関係など、その家系図は容易に理解できるものではありません。栄華と衰退、そして傍流の隆盛を繰り返した長沢松平家は、日本の歴史において特異な存在感を示した一族と言えるでしょう。その歴史は、日本の歴史、特に徳川時代における家系や権力構造の複雑さを改めて認識させてくれます。 様々な資料を元に、その系譜を辿ることは、日本の歴史を深く理解する上で貴重な経験となるでしょう。

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