長沼真太郎

長沼 真太郎（ながぬま しんたろう）

長沼真太郎氏は、1986年生まれの日本の実業家です。北海道を拠点に広範な菓子事業を展開する北海道コンフェクトグループの代表取締役を務めています。実父は、北海道を代表する菓子メーカーの一つである「きのとや」の創業者、長沼昭夫氏です。北海道札幌市に生まれ育ち、北海道札幌南高等学校を卒業後、慶應義塾大学商学部で学びました。

実業家としてのキャリアの始まり

大学卒業を控えた就職活動時、父親の背中を見て菓子店の経営に関心を持ちつつも、成功に至るプロセスを深く理解するため、将来的な起業を視野に入れ総合商社への就職を選択します。2010年に丸紅株式会社に入社し、製菓関連ビジネスの取扱が豊富な菓子食品課に配属され、主に海外からの食品輸入業務に携わりました。商社での経験を積む中で、家業であるきのとやの中国市場への出店計画が持ち上がります。長沼氏はその計画に専念するため丸紅を退社しますが、菓子製造技術の習得不足や計画の方向性を巡る見解の相違などから、この海外進出計画はわずか半年ほどで中止に至りました。

家業「きのとや」での経験と新たな事業への挑戦

中国事業の頓挫を経て、2011年にきのとやに入社します。そこで任されたのは、当時売上が伸び悩んでいた新千歳空港の店舗「KINOTOYA 2」の立て直しでした。長沼氏は、この店舗を焼きたてチーズタルトの専門店へと大胆に転換することを決断します。この専門特化戦略が見事に奏功し、店舗の経営は劇的に改善。この成功体験は、その後の彼の事業展開の礎となります。

次に、デコレーションケーキのインターネット販売サービス「Click On Cake」の立ち上げを目指し、子会社「COC」を設立。このEC事業の展開においては、配送上のトラブルに見舞われたり、顧客が細かく仕様を選べるチョコレートのカスタマイズ販売で苦戦するなど、多くの困難に直面しました。しかし、ECサービスを通じてITを活用したビジネスの可能性を肌で感じ、長沼氏のITスタートアップへの思いがさらに高まります。

革新的な菓子ブランド「BAKE」の創業と成長

EC事業での模索とITへの関心を背景に、長沼氏は2013年に再び東京へ活動拠点を移し、株式会社BAKEを創業します。創業初期、事務所として借りていたマンションの一室をAirbnbで貸し出していた際に宿泊したアメリカ人ITエンジニアとの交流から、写真入りケーキの受注サービス「PICTCAKE」が生まれます。このPICTCAKEが最初の成功を収め、BAKEの事業展開に弾みがつきました。

そして2014年、「焼きたてチーズタルト専門店 BAKE CHEESE TART」の1号店を新宿にオープン。新千歳空港店での経験を活かしたこの専門店は瞬く間に人気を博し、BAKEの代名詞となります。この成功を皮切りに、長沼氏は特定の菓子に特化した専門店ブランドを次々と生み出していきます。

クロッカンシュー ザクザク（2014年誕生）
アップルパイ専門店 RINGO（2016年誕生）

これらのブランドは国内外で人気を集め、BAKEは11カ国以上の国や地域に店舗を展開するグローバル企業へと急成長を遂げました。

事業売却と新たな道へ

事業が順調に拡大する中、2017年に株式会社BAKEの事業を投資ファンドであるポラリス・キャピタル・グループへ売却することを決定。翌2018年にはBAKEの会長職を退任し、経営の第一線から離れます。その後、アメリカのスタンフォード大学で客員研究員として活動しました。

北海道への帰還とグループ経営体制の構築

アメリカでの活動を経て、長沼氏は再び北海道へと軸足を移します。2020年には農業関連事業を展開する株式会社ユートピアアグリカルチャーの代表取締役に就任。さらに、かつて設立した子会社COCを通じて、冬期限定の菓子ブランドとして人気を博す「SNOWS（スノー）」の展開を2021年に開始します。

そして2022年10月、長沼氏は自身のルーツである北海道の菓子業界において、新たな重要な役割を担うことになります。きのとや、千秋庵、北の食品、ユートピアアグリカルチャーといった複数企業を傘下に収める持株会社、「北海道コンフェクトグループ」が設立され、その代表取締役に就任しました。これにより、長沼氏は北海道を代表する菓子・食品関連企業群を束ねるリーダーとして、グループ全体の経営戦略と事業展開を指揮しています。

メディア出演など

2023年11月30日には、テレビ東京系列の経済ドキュメンタリー番組「日経スペシャル カンブリア宮殿」に出演。「菓子作りの常識を打ち破れ！ 名店を進化させる2代目の挑戦」と題し、長沼氏のキャリアと北海道コンフェクトグループでの取り組みが紹介されました。また、実業家としての活動や日常について、X（旧Twitter）などのソーシャルメディアでも発信を行っています。

もう一度検索