長谷部稔

長谷部 稔（はせべ みのる）

長谷部稔は、1931年10月15日に広島県で生まれた元プロ野球選手で、ポジションは捕手です。長谷部は旧制中学校の広島県立広島工業学校（現在の広島県立広島皆実高等学校）に通っていたころ、広島原爆という歴史的な出来事を経験しました。この出来事は、彼の人生において大きな影響を与えました。

高校時代、長谷部は皆実高等学校の野球部で捕手として4番打者を務め、1949年第31回全国高等学校野球選手権大会予選の西中国大会決勝に進出しました。しかし、その決勝戦で山口県立柳井高等学校に敗れたため、甲子園大会への出場は果たすことができませんでした。卒業後は土木技術者を目指していましたが、1949年に地元初のプロ野球球団である広島カープの入団テストに参加することを決意します。

入団テストでは、彼のスローイングや肩の強さが評価され、石本秀一監督からすぐに契約を勧められました。長谷部は監督室で4時間にわたって説得を受け、最終的に広島カープへの入団を決めることになります。創成期の広島カープは資金的に厳しい状況にあり、長谷部は街中で鉛筆を販売したり、劇場で『炭坑節』を歌うなどして資金調達に奔走しました。このエピソードは2001年5月1日に放送された『プロジェクトX』でも紹介され、多くの視聴者に感銘を与えました。

長谷部は広島カープに入団後、3年目には控え捕手として41試合に出場しました。彼は同年にテスト生として入団した長谷川良平と親しい関係にあり、長谷川が登板する試合では頻繁にボールを受けていました。しかし、チームには門前眞佐人などの有力選手がいたため、正捕手の座をつかむことはできず、1956年には現役を退いて東洋工業（現在のマツダ）に入社しました。

長谷川良平が亡くなった2006年以降、長谷部は第3代広島カープOB会会長としてその役割を引き継ぎました。2010年8月31日には、旧広島市民球場で行われたイベントに出席し、試合後には「終球式」を行いました。2013年12月7日の広島カープOB会総会では安仁屋宗八に会長職をバトンタッチし、名誉会長として今もその名を残しています。

長谷部稔は、広島カープの歴史において重要な役割を果たしており、多くのファンに愛され続けている存在です。その献身的な姿勢とプロ野球への情熱は、後の世代に大きな影響を与えています。

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