長都駅

長都駅（おさつえき）

北海道千歳市上長都に位置する、北海道旅客鉄道（JR北海道）千歳線の鉄道駅である。駅には「H12」という駅番号が付けられており、電報略号としては「オツ」が使用されている。駅の近隣に麒麟麦酒の工場があることから、2019年8月1日からは「キリンビール北海道千歳工場前」という副駅名も制定されている。

誕生の背景と歴史

長都駅が開設されるに至った背景には、第二次世界大戦後の長都地区における急激な人口増加がある。1946年から翌年にかけて行われた大規模な入植に加え、その後の緊急入植などにより、当時の千歳町長都地区の人口は飛躍的に増大した。これにより、地域の交通インフラ整備が喫緊の課題となり、地元住民と町当局から当時の国鉄に対し、駅設置の強い請願が行われた。

住民運動は具体化し、1953年には地元住民による「長都駅設置期成同盟」が結成され、千歳町を通じて札幌鉄道管理局に駅の設置が正式に請願された。請願から数年後の1957年12月3日には、期成同盟の関係者と町当局の担当者が札幌鉄道管理局に出向き、具体的な協議を行った。その結果、駅設置工事にかかる費用約104万円のうち、7割を千歳町が負担すること、そして住民が工事に労力奉仕をすることなどが約束され、駅実現に向けた道筋が明確になった。

こうした地元の熱意と協力が実を結び、正式開業に先立つ1958年3月1日、長都駅は仮乗降場として設置され、使用が開始された。その後、同年7月1日には日本国有鉄道千歳線の駅として正式な開業を迎える。開業当初は旅客のみを取り扱う駅員無配置駅であった。設備は極めて簡素で、長さ60メートル級の単式ホームが1本あるのみで、待合室も設置されていなかった。停車する列車も、当時の普通列車上下各13本中、札幌方面行きが5本、千歳方面行きが6本と限られていた。開業日の7月1日は、奇しくも千歳町が市制を施行した記念すべき日であり、長都駅では開業式に代えて、市制施行記念式典と同日の7月3日に落成式が挙行された。

駅の設備は、その後の利用状況や時代の変化に合わせて段階的に改良されていった。1965年9月27日には、千歳駅から恵庭駅間で行われた複線化工事が完了したことに伴い、長都駅にも新たに下り列車用のホームが増設され、列車交換が可能な相対式ホームへと構造が改められた。待合施設については、1970年頃に千歳・苫小牧方面行きホーム（現在の1番線）の入口付近（東口側）に、地元住民によってブロック造りの小さな待合室（約2畳）が設けられたのが最初期の改良である。さらに1977年6月には、駅近くにある北海道千歳北陽高等学校に通学する生徒たちの利便を図るため、札幌方面行きホーム（現在の2番線）側の入口付近（西口側）に、より広い（28平方メートル）トイレ付きの待合室が設置された。

1987年4月1日には、国鉄の分割民営化により、長都駅は北海道旅客鉄道（JR北海道）に継承された。民営化後も設備の充実は進められた。1989年11月4日には、地元企業の寄贈により、駅構外の西口側に駅機能は持たないものの、待合スペースとして開放された鉄骨造り平屋建ての建物（112平方メートル、トイレ付）が竣工し、「長都駅前広場待合室」と名付けられた。これは実質的に西口側の駅舎としての役割を担うことになった。

1991年には千歳市によって長都駅前広場整備計画が策定され、これに基づいた駅周辺の改良が進められた。同年頃には上りホーム側の待合室が撤去されている。1992年6月には、同年7月1日の新千歳空港駅開業に合わせて、ホームの有効長が6両編成に対応できるよう延長された。また、同年12月までには駅前広場整備計画の一環として、西口広場の整備が先行して完了した。

駅の東西を結ぶアクセスも改善された。長らくホーム間の移動は千歳寄りの踏切のみに限定されていたが、1993年8月27日に東西自由通路を兼ねる跨線橋の建設が着手され、翌1994年12月17日には「おさつスカイロード」と名付けられたこの跨線橋が開通した。さらに1996年10月から12月にかけて、「おさつスカイロード」から各ホームへ直接降りることのできる乗換通路が設置され、駅構内の移動利便性が大幅に向上した。

1999年には、都市型駅としての設備が導入された。同年7月16日には自動改札機が設置され、供用が開始された。同年8月には、JR北海道によって、東西自由通路である「おさつスカイロード」からの乗換通路を取り込むような形で、西口・東口双方に簡易な駅舎が完成した。

その後の主な設備改良としては、2008年10月25日のICカード「Kitaca」の使用開始が挙げられる。駅前広場についても改良は続き、2018年10月からは東口ロータリーの整備工事が開始された。これにより、市民の反対によって広場用地が道路（鉄北通）で分断されていた状態が解消された。直近では、2021年3月に「札幌圏無人駅案内システム」（列車の発着情報などを液晶画面で案内）が設置され、同年11月にはホームの安全対策として、ホーム端にCPライン（赤色の注意喚起線）が整備された。さらに、2023年には手狭さが指摘されていた札幌方面行きホーム（2番線）の拡幅工事が始まり、翌年に完了している。

駅構造

長都駅は地上に相対式ホームが2面2線配置された構造を持つ。待合施設については、かつて西口構外に設置された「長都駅前広場待合室」が事実上の駅舎として機能していた時期もあったが、現在は1999年に完成した西口および東口の簡易駅舎が主たる待合施設となっている。これらの簡易駅舎は、東西を結ぶ自由通路である跨線橋「おさつスカイロード」に直結する形で設けられている。ホーム間の連絡は、長らく千歳寄りの踏切に限られていたが、1994年に完成し東西自由通路を兼ねる跨線橋「おさつスカイロード」によっても可能となった。

駅は千歳駅が管理する無人駅であり、駅員は常駐していない。乗車券の購入には簡易自動券売機が設置されており、改札は簡易自動改札機が用いられている。この自動改札機は、ICカード「Kitaca」および磁気乗車券の両方に対応している。

駅名の由来

長都駅という名称は、駅が所在する地名「長都」に由来する。この地名の語源は、アイヌ語の「オサッナイ」にあるとされている。「オサッナイ」は、「オ（川尻）・サッ（乾く）・ナイ（川）」という意味が組み合わさったもので、「川尻が乾いている川」という意味合いを持つ。これは、かつての長都川の様子を表していた言葉が地名となり、さらに駅名に採用されたものと考えられている。

利用状況と駅周辺

長都駅は駅員が配置されない無人駅でありながら、比較的利用者の多い駅として知られている。千歳市のデータによると、1998年度における1日平均の乗車人員は587人であったが、その後増加傾向が続き、2014年度には1,148人となっている。また、同年度の1日平均乗降人員は2,296人を記録しており、これはJR北海道管内の無人駅の中では3番目に利用者が多いという特筆すべき状況にある。この利用者の多さは、駅周辺の住宅地開発や工場への通勤需要などを反映していると考えられる。

駅周辺の環境は、線路を境に東西で異なる様相を呈している。駅西側には工場地帯が広がっており、副駅名の由来である麒麟麦酒千歳工場をはじめとする事業所が多く立地している。一方、駅東側は主に住宅地であり、千歳市立北陽小学校（近年児童数が日本一となった時期がある）や千歳市立勇舞中学校、北海道千歳北陽高等学校といった教育機関が集まるエリアとなっている。

その他、駅周辺には苫小牧信用金庫の支店や千歳長都駅前郵便局などの金融・郵便サービス、ゆうまいプラザ千歳やちとせモール（かつてのイトーヨーカドー千歳店跡地）といったショッピングセンター、ツルハドラッグなどの商業施設が点在し、地域住民の生活利便性を高めている。また、駅東口には北海道中央バスをはじめとする路線バスの停留所があり、駅からのバス利用も可能である。

隣の駅

JR北海道 千歳線における長都駅の隣駅は以下の通りである。

千歳駅 (H13) - 長都駅 (H12) - サッポロビール庭園駅 (H11) - 恵庭駅 (H10)

なお、千歳線を通る普通列車の一部は、サッポロビール庭園駅を通過する列車も存在する。

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