長野まゆみ

長野まゆみは、1959年東京都に生まれ、女子美術大学でデザインを学んだ後、小説家としてデビューしました。自作の装丁や挿絵も手がけるイラストレーターでもあります。彼女の作品は、耽美的な世界観と流麗な文体が特徴で、読者を幻想的な世界へと誘います。

作風と影響

長野まゆみの作風は、少女漫画や少年愛文学の影響を色濃く受けています。小学3年生の時に読んだ竹宮惠子の作品に衝撃を受け、少年愛の世界に足を踏み入れました。萩尾望都や稲垣足穂といった作家からの影響も公言しており、特に三島由紀夫を敬愛しています。文章表現においては、三島由紀夫、夏目漱石、内田百閒を好み、稲垣足穂からは独特の感覚を学び、独自の研究を重ねています。また、宮沢賢治からの影響も大きく、デビュー作である『少年アリス』をはじめ、多くの作品で宮沢賢治の作品を引用しています。特に『銀河鉄道の夜』からの引用が多く、1990年代初頭には宮沢賢治ブームが彼女の中で起こっていたそうです。海外の古典よりも、ブラッドベリやハインラインといった「軽いSF」を好んで読んでいたと述べています。

長野まゆみは、自身の読者の9割が女性であると認識しており、女性のために作品を書いています。デビュー以来、独自の作風を貫いており、文芸作家としては非常に多作です。日本のSF界においても精力的な作家の一人として知られています。作品には、鉱石、機械、幻想世界に存在する美少年といったモチーフが頻繁に登場し、少年同士や少年と青年の関係を描くものが多いです。初期の作品では、兄弟や親友同士の友情や精神的な絆が描かれています。ユニセックスな「やおい」的な要素も含まれており、1980年代のサブカルチャーとの関連性も指摘されています。

初期の作品から、一つのイメージから世界観を広げていく手法を用いていましたが、作家としての転機となったのは『テレヴィジョン・シティ』です。この作品以降、メタノベル的な構造や様々な実験的な試みを行うようになり、作風の幅を広げています。文壇からの評価は必ずしも正当なものではないと認識しており、文壇の状況とは関係なく、より実験的な方向へと進んでいます。

福本直美は長野まゆみの作風を「いかにして人間をやめるか」と評し、長野自身も「生物全般が好きで人間は嫌い」という姿勢で作品を書いていると語っています。秋枝美保は、長野の作品世界を、作者の美意識によって選ばれた独特の記号で埋め尽くされた美しくも平面的な仮想現実と評し、多重の模擬世界を表現することで、現実から二重三重の疎隔感があると指摘しています。また、1980年代の少女漫画に宮沢賢治の作品がよく引用されていたことにも触れ、長野の作品はその延長線上にあると述べています。

長野の作品には、多重人格的な人間の意識の奇妙さが描かれることが多く、「意識・記憶・身体」というテーマからはなかなか離れられないと語っています。これらのテーマへの興味は自然に湧いたものですが、物理学や生物学系のニュースにも意識を向けているそうです。1990年代に入って急激に増加した植物の生物学的な情報やバイオテクノロジーの知見が、『新世界』『超少年』『サマーキャンプ』といった作品に繋がっています。

活動

長野まゆみは、有限会社耳猫風信社を設立し、同名の作品を刊行しています。自身は社長には就かず、鉱石愛好家であることから、鉱石や関連商品の販売を行っています。当初は店舗販売も行っていましたが、現在はオンラインショップでの通信販売のみとなっています。人気商品の購入には、長野が描き下ろした小冊子に記載されている《受注番号》が必要であり、小冊子の購入を促すことで、ファンクラブのような役割も果たしています。近年では、画廊を貸し切ってイベントを開催したり、各種イベントにも積極的に出店しています。

受賞歴

長野まゆみは、商業デザイナーを経て小説家デビューしました。1988年に『少年アリス』で文藝賞を受賞し、2015年には『冥途あり』で泉鏡花文学賞と野間文芸賞を受賞しています。

主な作品

彼女の作品は多岐にわたり、以下のようなシリーズ作品や単独作品があります。

天球儀文庫series
新世界series
青い鳥少年文庫series
凛一series
* 左近の桜series

その他にも、『少年アリス』、『テレヴィジョン・シティ』、『鉱石倶楽部』など、多くの作品を発表しています。これらの作品は、純文学からSFまで、多彩なジャンルにわたり、彼女の独特な世界観を堪能することができます。

長野まゆみは、文学界において独自の地位を築き、多くの読者を魅了し続けている作家です。

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