長野工藤氏

長野工藤氏について

長野工藤氏は、伊勢国において強い影響力を持った有力な国人である。一般には長野氏と呼ばれることが多いが、元々は工藤氏を名乗っていたため、「長野工藤氏」との表記が使われることが多い。この一族の通字は「藤」である。

出自

この一族は藤原南家乙麿流に起源を持つ。特に注目すべきは、工藤祐経の三男・祐長である。彼は曾我兄弟に命を奪われた後、伊勢平氏の残党の討伐を目的として伊勢国の長野に地頭職を与えられ、安濃郡と奄芸郡の2郡の支配を受けた。祐長の子、祐政が長野に居を構え、長野氏が名乗られるようになった。

歴史

鎌倉時代には伊勢国中部の有力国人として名を馳せていた長野工藤氏だが、南北朝時代に突入すると北畠氏が南朝方としてこの地域に進出してきた。これに対抗し、長野氏は北朝方につき、激しい覇権争いを繰り広げることとなった。この時期には、書物『梅松論』にも「長野工藤三郎左衛門尉」の名が登場し、彼らの存在が広く知られていたことが伺える。

南北朝時代を通過後も、長野氏と北畠氏との抗争は続いた。1429年、北畠満雅が明徳の和約に基づく両統迭立を求めて蜂起した時、長野満藤は幕府方に応じ、諸将と共に安濃郡の岩田川で満雅を打ち破る（岩田川の戦い）。この戦功によって、長野氏は幕府から北畠家の一志郡を下賜され、さらなる権力を強化した。

1467年からの応仁の乱では、長野氏は西軍（山名宗全側）に属し、一方の北畠氏は東軍（細川勝元側）に組み込まれて互いに対立した。戦国時代に入ると、北畠氏には英主と称される北畠晴具が現れ、両家の力関係は徐々に変化していった。長野藤定は北畠の圧力を受け、その力を次第に失っていく。

1558年、長野藤定は北畠具教に屈服し、具教の次男・具藤を養嗣子に迎え入れる。これにより長野氏は北畠氏と和解し、傘下に入る。その後、尾張の織田信長が伊勢に侵攻した際、長野氏は具教とともに抵抗するも敗北。信長の弟・信包を養嗣子として迎えることを余儀なくされ、北畠・長野両家は織田氏の傘下となる。一族の長野左京亮は織田方に近づき、北畠具教の暗殺に関与したとされる。

その後、信包が織田姓を復したことで長野氏の独立した領主としての地位は消失したが、旧長野氏の一族や家臣団は信包に仕え続けた。しかし、1594年に信包が豊臣秀吉に改易されたことで、長野氏の一族や家臣団はバラバラになり、ついには存在が消滅することとなった。

系譜

長野工藤氏の一族には、分部氏や細野氏、雲林院氏などが含まれている。彼らの家系は様々な歴史的な出来事に翻弄されつつも、地域の支配体制に関与していた。

残念ながら、長野氏の名に連なる一族は時代の流れに飲まれ、最終的にはその血脈も途絶えることとなったが、彼らの影響は長い間、伊勢における支配体制に影を落とし続けた。

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