長門警固番役

長門警固番役の概要

長門警固番役とは、鎌倉幕府が元軍の侵略に備え、長門国及びその周辺地域の警備を行うために創設した制度のことです。この役割は、九州に設置された異国警固番役と同様の位置付けであり、主に関門海峡周辺の安全を確保することを目的としました。

背景

文永の役以降、鎌倉幕府は元軍の脅威を真剣に捉え、各地の御家人に対して防衛の強化を図りました。特に、長門国はその地理的条件から侵略の最前線となることが予想され、そこでの警備を任せられたのが地元の御家人たちでした。彼らは自らの土地を守るだけでなく、幕府の命令に従い、長門の警備を強化する役割を担いました。

建治元年の1275年5月12日、文永の役の経験から、幕府は長門国の御家人だけでは不十分と判断し、周辺の山陽道に属する周防国や安芸国の御家人にも警備を命じました。これにより、長門国の御家人は他国の武士と共同で警備にあたり、いわゆる結番を編成して、交代で沿岸部や重要な地点の警備を行うこととなりました。

拡大する動員

その後、建治2年8月24日（1276年10月3日）には、さらに残りの4カ国、播磨国、備前国、備中国、美作国及び南海道に属する全6か国に対しても長門警固の命令が下されました。これは、幕府が元軍の脅威が依然として残っていると考え、より広範囲にわたって防衛体制を強化していった結果であったと言えるでしょう。

さらに、長門国を含むこれらの地域に居住する非御家人の武士たちも動員され、地域防衛へと組織的に参加することが求められました。これにより、警固任務は長門国独自のものではなく、周辺地域を巻き込んだ広域な防衛組織へと変貌を遂げていきました。

文献資料からの証拠

この動員については、当時の守護であった武田信時に宛てた幕府からの教書や、出雲大社に関連する文書などからも具体的な証拠が見つかっています。

もう一度検索