武田信時

武田信時

武田信時（たけだ のぶとき）は、鎌倉時代中期に活躍した武将であり、甲斐源氏の第7代当主にあたります。彼は、室町・戦国時代にかけて甲斐国を統治した武田宗家の祖である信時流武田氏の始祖としても知られています。

生涯

信時は、甲斐源氏第6代当主である武田信政の子として生まれました。母は大内惟義の娘と伝えられています。信時の祖父にあたる武田信光は、奥州合戦で活躍し、平家討伐後には安芸守護としての職権を行使しました。承久の乱後も安芸守護を務め、西国における鎌倉幕府の影響力拡大に貢献しました。

信時は、承久2年（1220年）に甲府の館で誕生し、幼名を音光丸と名付けられました。寛喜元年（1229年）には、当時の執権であった北条泰時を烏帽子親として元服し、「時」の偏諱を与えられて信時と名乗るようになりました。

『吾妻鏡』には、信時に関する記述が3回登場します。嘉禎3年（1237年）には、大慈寺に新築された丈六仏を安置する堂の開眼供養に、将軍・九条頼経の随兵として参加しました。翌年には、将軍の外出の際に護衛兵として随伴し、仁治元年（1240年）には、箱根・走湯の二所権現参詣に向かう将軍の行列に随行しました。

『吾妻鏡』への登場はその後途絶えますが、文永6年（1269年）には、信時の守護代である武藤時定の動向が確認できます。また、同年には蒙古襲来に備えて御家人を率いて西国へ出向を命じられ、建治2年（1276年）まで西国で活動しました。このことから、信時は安芸守護を務めていたと考えられています。ただし、建治元年（1275年）の記録には、「鎌倉中　武田入道跡」が100貫を納めているという記述があり、鎌倉にも屋敷を構えていた可能性が指摘されています。

弘安2年（1279年）に出家し、光海と号しました。正応2年（1289年）に死去し、跡を子の武田時綱が継ぎました。信時は、信時流武田氏の祖として、南北朝時代には曾孫にあたる信武が石和流武田氏の政義を排斥して甲斐国守護を継承し、室町・戦国時代にかけて甲斐守護の地位を維持しました。

武田信時流の特徴

信時流武田氏は、南北朝時代から室町・戦国時代にかけて甲斐国を支配し、武田宗家として発展しました。信時の子孫は、甲斐国の守護大名として勢力を拡大し、戦国時代には武田信玄のような傑出した武将を輩出しました。信玄は、その卓越した軍事的手腕と政治力によって、武田氏を戦国大名として確立し、その名を歴史に刻みました。

まとめ

武田信時は、鎌倉時代中期の武将であり、甲斐源氏の第7代当主として、また信時流武田氏の祖として、武田氏の発展に大きく貢献しました。彼の功績は、室町・戦国時代の武田宗家の隆盛に繋がり、武田信玄のような傑出した武将を輩出する基盤となりました。

参考文献

秋山敬「他国に広がる甲斐源氏」『山梨県史』通史編2中世
佐藤進一『増訂鎌倉幕府守護制度の研究』
河村昭一『安芸武田氏』
高野賢彦『安芸・若狭 武田一族』新人物往来社、2006年、48-54頁。
* 「甲斐信濃源氏綱要」（国書刊行会編 『系図綜覧』第一 所収）

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