閉塞前線

閉塞前線：温暖前線と寒冷前線の融合

閉塞前線は、温帯低[[気圧]]のライフサイクルにおいて重要な役割を果たす気象現象です。温暖前線と寒冷前線が合体し、地上では2つの冷たい気団が接する状態になります。暖かい空気は冷たい空気によって上空に持ち上げられ、地上では前線が閉塞したような構造となることから、この名が付けられています。

閉塞前線の形成過程

北半球において、温帯低[[気圧]]の発生初期には、低[[気圧]]の南東側に温暖前線、西側に寒冷前線が形成されます。これらの前線は低[[気圧]]中心に向かって反時計回りに移動しますが、寒冷前線の移動速度が速いため、やがて低[[気圧]]付近で両者が合体します。この合体こそが閉塞前線の形成過程です。温暖前線の前方と寒冷前線の後方には冷たい空気が存在するため、閉塞前線ではこれらの冷たい空気同士が接することになります。しかし、両者の気温にはわずかな違いがあり、より冷たい空気がより暖かい空気の下にもぐり込むことで、独特の構造が形成されます。

閉塞前線の種類

閉塞前線の構造は、2つの冷たい空気の温度差によって異なります。

寒冷型閉塞前線: 寒冷前線側の寒気がより冷たいため、温暖前線側の寒気の下にもぐり込み、寒冷前線面に沿って形成されます。前線面の傾斜は急で、通過時の気象は寒冷前線に似ています。短時間の激しい雨（驟雨）が特徴です。
温暖型閉塞前線: 温暖前線側の寒気がより冷たいため、寒冷前線側の寒気がその上に乗り上げます。前線面の傾斜は緩やかで、通過時の気象は温暖前線に似ています。比較的長時間の雨が降りやすく（時雨）、積乱[[雲]]が発達すれば雷雨を伴うこともあります。
中立型閉塞前線: どちらの寒気の勢力も拮抗している場合です。

地上[[天気図]]では、閉塞前線が寒冷前線または温暖前線と直線的につながっているかで、寒冷型か温暖型かを判断できます。いずれの場合も、上空では前線面と前線面の接する線が形成され、それぞれ上空寒冷前線、上空温暖前線と呼ばれます。

特殊な閉塞前線

インスタントオクルージョン（瞬間閉塞）: 寒気の中で低[[気圧]]が発生すると、当初から閉塞前線を伴うことがあります。これは、広い寒気域で小規模な低[[気圧]]が形成された際に起こります。閉塞は不完全で、低[[気圧]]はその後も成長する可能性があります。
* ベントバックオクルージョン（後屈閉塞）: シャピロ・ケイサー・モデルでは、閉塞前線は存在せず、後屈温暖前線が存在すると考えられています。これは、長い温暖前線に寒冷前線が直角にくっつくような形状（Tボーン型）で、従来の閉塞前線は温暖前線に置き換わるとされます。

閉塞前線と低[[気圧]]

閉塞前線の形成は低[[気圧]]の発達と密接に関係しています。低[[気圧]]の最も発達した時期に形成され始め、閉塞部分が長くなるにつれて低[[気圧]]は次第に弱まっていきます。閉塞前線の成長により、暖気が低[[気圧]]中心から排除され、南北の温度差が小さくなることが低[[気圧]]の衰弱原因の一つです。閉塞前線形成後、2～4日程度で低[[気圧]]はほぼ消滅すると考えられています。

閉塞前線の通過時における気象

閉塞前線の通過時の気象は、寒冷前線の通過時に近いとされています。気温は寒冷型ではゆっくりと下降し低止まり、温暖型ではゆっくりと上昇し高止まりします。湿度は通過前に上昇し、通過後低下します。前線の接近に伴い気圧は低下し、通過後は上昇します。雲は地上付近では層雲、層積[[雲]]、乱層雲、積[[雲]]が多く、上空では高層雲、高積[[雲]]、巻層雲、巻雲が多く観測されます。温暖前線と同様に、前線の接近1～2日前から巻雲が見られることもあります。

温度差が小さくなったとはいえ、温度の境界面が2層になることで大気の不安定度が増す場合があり、上空の温度差も悪天候の原因となります。寒冷型では短時間の強い雨、温暖型では長時間の雨が降りやすく、積乱[[雲]]が発達すれば雷雨や激しい雨が降る可能性があります。閉塞後、時間の経過とともに雲の発達は弱まり、層積[[雲]]などによる曇天となります。風は、前線の通過に伴い東寄りの風から南寄りの風（南半球では東寄りの風から北寄りの風）に変わります。

閉塞前線の地域性と季節性

閉塞前線は、低[[気圧]]が発達し長寿命となる地域に多く発生します。北半球では、北米東海岸からヨーロッパにかけてのアイスランド[[低[[気圧]]]]や、東アジアからアラスカ沖のアリューシャン[[低[[気圧]]]]などがその例です。日本付近では寒気の影響が強く、低[[気圧]]が発達過程にあることが多いことから、寒冷型閉塞前線が一般的です。一方、ヨーロッパでは温暖型もよく見られ、前線が低[[気圧]]を大きく回り込むようなパターンも見られます。これは、ヨーロッパでは暖気の勢力が弱く、低[[気圧]]の最盛期から減衰期の通過場所に位置することが多いためです。

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