閉塞性血栓性血管炎

閉塞性血栓性血管炎（バージャー病）

閉塞性血栓性血管炎（へいそくせいけっせんせいけっかんえん、Thromboangiitis Obliterans）は、末梢動脈において炎症と血栓形成を伴い、血液の流れが阻害される病気です。この疾患は、特に手足の末梢に痛みや潰瘍、壊死を引き起こし、日常生活に大きな影響を及ぼします。発見者であるレオ・ビュルガーにちなんで「ビュルガー病」とも呼ばれ、日本では14番目の特定疾患治療研究対象疾患として認定されており、国の治療費補助が受けられます。

病態

この病気の具体的な原因は今なお明確ではありませんが、多くのケースにおいて四肢の主幹動脈や末梢動脈の狭窄と血栓が形成され、血流が低下します。その結果、歩行時に足のしびれや痛み、冷感を感じることが一般的です。病状が進行すると、安静時にも疼痛や不快感が生じることがあります。

血栓が末梢動脈で発生すると、血管壁が結合組織に置き換わり、結果として動脈が閉塞します。これにより血流が途絶えると、末梢部分の細胞が壊死することがあり、重篤な難治性潰瘍や壊疽、最終的には下肢の切断となることもあります。

疫学

この病は主に男性に多く発生し、約90%の患者が男性で、女性は約5%にとどまります。特に20歳から50歳の若年層、特に30代の喫煙者に多く見受けられるため、喫煙が強く関与しているとされています。また、受動喫煙も含めると、ほぼすべての症例において喫煙との関連が見られます。日本国内では約1万人の患者がいるとされ、近年では患者数が減少傾向にあります。

遺伝的要因としては、HLA-A9やHLA-B5の遺伝子型を持つことでリスクが高まる場合があることがわかっています。

症状

具体的に見られる症状には以下のようなものがあります。

• - 遊走性静脈炎: 静脈に炎症が生じ、痒みを伴います。
• - 血流不足による虚血: 末梢部でのしびれや冷感、部位の蒼白化、潰瘍が生じます。特に短距離の歩行での間欠跛行や、安静時の激しい疼痛が特徴です。
• - レイノー症状: 寒冷にさらされることで血管が異常に収縮し、指や足の先が白く冷たくなります。

末梢動脈の拍動が消失することもあり、ドップラー血流計を用いることで診断が行われます。確定診断には血管造影が必要です。

治療法

閉塞性血栓性血管炎による病変は末梢に存在するため、血行再建手術が難しいとされています。主な治療方針は以下となります。

• - 対症療法: 薬物療法としてプロスタグランジンなど血小板凝縮抑制薬が使用されます。
• - カテーテル治療や血管バイパス形成: 血行を改善するための手段が検討されます。
• - 骨髄細胞移植: 血管新生を促進する治療が行われることもあります。
• - 超音波照射: 症状の緩和を目的とする方法です。

日常での注意点

患者は日常生活においても特別な注意が必要です。以下に挙げる行動を通じて血行不良を防ぎ、皮膚感染症から自らを守る努力が求められます。

• - 禁煙: ニコチンにより血管が収縮し、症状が悪化するため禁煙が必須です。
• - 足の保温・保護・清潔: 足元を暖かく維持し、靴下を着用して足指を守ることが重要です。
• - 運動: 定期的な運動で血流が改善されるので、歩行が推奨されます。
• - 水分摂取: 医師の指導に従い、積極的に水分を摂取することで血栓の形成を抑えることが期待されます。
• - 動脈状態の観察: 毎日、自身の動脈の状態を確認し、再閉塞がないかを監視します。

このような生活習慣の見直しが、病気の管理に大きな影響をもたらします。

もう一度検索