開済

開済（かい さい、生年不詳 - 1383年）は、元末から明初にかけて活躍した官僚・政治家で、字は来学、本貫は河南府洛陽県です。

生涯

元末期には、チャガン・テムルの下で掌書記を務めていました。明朝が成立すると、洪武初年に明経により官界入りし、河南府訓導、国子助教を歴任しました。病を理由に一時帰郷しましたが、1382年、御史大夫の安然の推薦で刑部尚書に試用されました。翌1383年2月には正式に刑部尚書に任じられています。

開済は、その職務において、官吏の評価制度の確立に尽力しました。各官庁に業務日誌を設け、日々の業務内容を記録し、それに基づいて官吏を評価するよう提言しました。また、各部の文書管理の期限や評価基準を定めることで、業務の効率化を図りました。さらに、軽犯罪を犯した軍民に対しては、迅速な審判を提言しました。都御史の趙仁が人材登用制度の改善を求めた際には、開済は経明行修、工習文詞、通曉書義、人品俊秀、練達治理、言有条理の六科を設け、人材を評価するよう提案し、洪武帝に受け入れられました。

開済は、その聡明さと弁舌の才で、国家の基幹制度、税制、刑事司法、建設工事、河川治水など幅広い分野にわたり提言を行いました。洪武帝の信任を背景に、他部署の業務にも積極的に関与しましたが、その結果、同僚からの反感を買い、批判を受けるようになりました。また、他者を中傷することも厭わず、洪武帝が詐欺に対する法を定めるよう命じた際には、細密すぎる法案を提出し、洪武帝から「民衆を締め付けるような網を張るのが良いのか」と叱責されました。さらに、部下を朝から晩まで働かせたため、「官吏が父母に奉じ、妻子と会う時間がない」と重ねて叱責を受けました。同僚や部下への戒めを文華殿に掲示しようとした際には、「人臣の礼に反する」と洪武帝に窘められ、陳謝する事態となりました。

その後、開済は郎中の仇衍に命じて死刑囚を脱獄させたことが発覚。獄官を殺害した罪で、1383年12月、御史の陶垕仲らの弾劾を受け、逮捕されました。最終的に、王希哲や仇衍らと共に棄市刑に処されました。

開済の生涯は、初期明朝における官僚制度の未成熟さや、権力闘争の激しさを浮き彫りにしています。彼の功績は、制度改革への積極的な姿勢と、その実現能力にあったと言えますが、同時に、独善的な行動と他者への配慮の欠如が、悲劇的な結末を招いたとも言えるでしょう。

参考文献

* 『明史』巻138 列伝第26

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