間宮永好

間宮永好（まみや ながよし）

間宮永好は、江戸時代後期から明治初期にかけて活躍した国学者、歌人です。文化2年（1805年）に江戸神田で生まれ、江戸と水戸で生活しました。国学者としての基礎は、小山田与清に師事したことで築かれました。天保年間には水戸藩倭書局に入り、師である与清らと共に『八洲文藻』の編集に携わっています。この時期に培われた国学の知識と研究は、後の彼の著作活動に大きく影響を与えました。

明治維新後、明治2年（1869年）には、伊能穎則の推薦により神祇権大史に任ぜられ、翌年には大史、従七位に昇進しました。明治3年（1870年）から明治4年（1871年）にかけては京都で勤務し、その後、文部省に転じました。しかし、明治5年（1872年）1月3日、68歳で病没し、その生涯を閉じました。彼の墓所は、谷中玉林寺の参道左側、本堂の前にあります。

学問と著作

間宮永好は、国学、歌道に深く精通し、その知識を基に多くの著作を残しました。彼の著作は多岐にわたり、古典研究から随筆、紀行文、歌集まで、幅広い分野にわたっています。代表的な著書には、以下のようなものがあります。

『日本紀竟宴歌』: 宗尊親王自筆本の与清写本を校正したものです。
『万葉長歌部類（万葉長歌分類）』: 天保9年（1838年）に成立した万葉集の長歌に関する分類です。
『和歌色葉集』: 和歌のいろは歌をまとめたものです。
『松屋随筆』: 日常生活や見聞を綴った随筆です。
『箱根温泉志』: 安政5年（1858年）に箱根を訪れた際の記録で、後に『箱根七湯志』として刊行されました。
『掌中年中行事』・『掌中年中行事拾遺』: 年中行事に関する解説書です。
『古今年中行事歌集』: 年中行事を題材にした歌集です。
『万葉地名抄』: 万葉集に登場する地名をまとめたものです。
『今古読法』・『今古仮名遣』: 古語の読法や仮名遣いに関する研究です。
『参考歳時記』: 歳時に関する参考書です。
『古今集新柱』・『百人一首新注』: 古今集や百人一首の注釈書です。
『品さだめ注』: 『源氏物語』の一場面に関する注釈です。
『行子の僧の集』:僧侶に関する歌集です。
『編年菅公伝』: 菅原道真の伝記を編年体でまとめたものです。
『神野山日記』: 嘉永7年（1854年）に妻と上総国を訪れた際の日記です。
『万葉集類語』: 万葉集の類語をまとめたものです。
『自讃歌集』: 自身の歌を集めた歌集です。
『八代集類語』: 八代集の類語をまとめたものです。
『松蔭集』: 与清門下の歌集です。
『職原抄新注』: 与清の注釈本を引き継いで注釈したものです。
『八雲のしをり』: 歌学の入門書です。
『詠草』: 歌の草稿です。
『仮名考に書き添ふる条々』: 仮名に関する考察を記したものです。
『詔詞解索引』: 本居宣長の著作の索引です。
『春の山路（春の山踏）』: 嘉永2年（1849年）に成立した紀行文です。
『松屋七九詠草』: 慶応3年（1867年）に成立した歌集です。
『間宮永好稿本』: 自身の稿本です。
『万葉集略解補正』: 万葉集の略解を補正したものです。
『犬鶏随筆』: 日常生活を綴った随筆です。
『書紀雑考』: 日本書紀に関する考察です。
『古学道統図』: 国学者の系譜図を補正、再刊したものです。
『喚犬喚鶏之舎日次記』: 安政6年（1859年）から文久3年（1863年）までの日記です。
『楽章』: 楽に関する文章です。
『ころもで日記』: 日常生活を綴った日記です。
『永好歌集』: 自身の歌集です。
『草津日記』: 草津を訪れた際の日記です。
『喚犬喚鶏之舎文集抜書』: 自著の抜粋です。
『歌集・短歌』: 慶応2年（1866年）に浄書された歌集です。
『松屋歌集』: 明治17年（1884年）に刊行された歌集です。
『万葉集類林』: 万葉集の類林をまとめたものです。
『語林類葉』: 語彙を分類したものです。
『筥荷日記』・『後筥根日記』: 日記です。

これらの著作を通して、彼の幅広い知識と深い学識が窺えます。しかし、残念ながら、著作の多くは火災により焼失してしまいました。一部は、南部利剛の室、明子を通じて盛岡市中央公民館に伝えられています。

人物

間宮永好は、学問に真摯に取り組み、多くの門人を育てました。彼の門人には、妻である間宮八十子や久米幹文らがいます。また、親族には、父の渡辺義礼や弟の渡辺清蔵らがいました。彼は生涯に三度の結婚をし、多くの子をもうけましたが、そのうちの多くが夭逝しました。娘の佐登は鈴木好輔に嫁いでいます。また、第三妻の八十子は、水戸藩徳川斉昭に出仕し、後の南部利剛室明子を教育した人物です。彼の甥である久米幹文も歌人・国学者として活躍し、東京大学や第一高等学校で教鞭を執りました。

間宮永好は、国学、歌道における重要な人物であり、その功績は後世に語り継がれるべきでしょう。

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