関三刹

関三刹について

関三刹（かんさんさつ）とは、江戸時代に関東地方における曹洞宗の宗務を統括した3つの寺院の総称です。具体的には、下野国（現在の栃木県）の大中寺（だいちゅうじ）、下総国（現在の千葉県）の總寧寺（そうねいじ）、武蔵国（現在の埼玉県）の龍穏寺（りゅうおんじ）を指します。

成立の背景

江戸時代、徳川幕府は宗教政策の一環として、各宗派の統制を図りました。特に、地方の農村や武士階級に大きな影響力を持っていた曹洞宗に対しては、より強力な支配体制を敷く必要がありました。

そこで幕府は、1612年（慶長17年）に関東の有力寺院であった上記の3寺を「関東僧録司」に任命し、宗派統制の権限を与えました。これにより、関三刹は曹洞宗の寺院や僧侶を統括し、寺院の住職の任免権も幕府が握ることで、宗派をより厳格に管理下に置きました。

さらに、曹洞宗の総本山である永平寺の住職を、関三刹の住職経験者から選出するという制度を設けました。これにより、関三刹は曹洞宗内で絶大な権威を持つようになりました。

関府六箇寺

関三刹の末寺にあたる江戸の3つの寺院（江戸三箇寺）と合わせて、「関府六箇寺」と呼ばれていました。これらの寺院もまた、関東の曹洞宗に大きな影響力を持っていました。

東海大僧録

また、静岡県袋井市にある万松山可睡斎（まんしょうざんかすいさい）も、徳川家康との関係が深く、「東海大僧録」として三河国、遠江国、駿河国、伊豆国の曹洞宗寺院を支配下に収め、関三刹と同等の権威を持ちました。

関三刹の役割と権力

関三刹は、全国を三分して管轄し、月番交代で宗務を執行しました。また、全国各地に録所を設置し、地域の宗政を掌握しました。これにより、曹洞宗内において非常に大きな権力を握るようになりました。

具体的には、寺院の住職の任命、寺院の財政管理、僧侶の教育、宗派内の紛争解決など、宗派運営に関わるあらゆる事項を決定する権限を持っていました。

明治維新以降

しかし、明治維新を迎え、宗教政策が大きく変化すると、関三刹の職務内容は宗務庁に引き継がれました。これにより、関三刹は宗派統制の役割を終え、歴史の中にその名を残すこととなりました。

関三刹の寺院

大中寺（だいちゅうじ）：栃木県栃木市大平町西山田にある寺院。
總寧寺（そうねいじ）：千葉県市川市国府台にある寺院。
龍穏寺（りゅうおんじ）：埼玉県入間郡越生町にある寺院。

関連事項

触頭（ふれがしら）：寺院における触頭制度。
* 雑学事件（ぞうがくじけん）：江戸時代に発生した寺院に関する事件。

関三刹は、江戸時代の宗教統制政策を象徴する存在であり、その歴史は日本の仏教史を語る上で重要な要素です。

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