関西急行電鉄1型電車

関西急行電鉄1型電車（モ6301形）

関西急行電鉄1型電車は、現在の近畿日本鉄道（近鉄）名古屋線の基礎を築いた車両の一つです。1937年（昭和12年）に10両が製造され、当時の最新技術とデザインが投入されました。その優美なスタイルと高い性能から、「緑の弾丸」の愛称で親しまれました。

誕生の背景

1938年（昭和13年）に開業した関西急行電鉄は、現在の近鉄名古屋線の一部（近鉄名古屋駅～桑名駅）を運営していました。1型電車は、この新線での運行に備えて製造された車両です。当時の鉄道車両としては珍しい流線形のデザインを採用し、深緑色の塗装が施されていました。

製造の背景には、伊勢電気鉄道の経営悪化と、参宮急行電鉄による吸収合併という複雑な経緯があります。伊勢電気鉄道が計画していた名古屋延伸の夢は、関西急行電鉄に引き継がれ、1型電車の製造へとつながりました。

車両の特徴

1型電車は、全長17mの中型車で、転換クロスシートを備えた快適な車内空間が特徴でした。当時の国鉄二等車に匹敵するほどのグレードで、特急列車に使用されました。

主要機器には、東洋電機製造製の主電動機や、三菱電機製のALF自動加速式制御器が採用されました。台車は日本車輌製造製のD-16形を使用し、乗り心地の向上に貢献しました。

外観は、前面貫通式で、大型のヘッドライトが特徴的でした。車体色は、当時の参宮急行電鉄の標準色であった深緑色が採用されました。

運用と変遷

1型電車は、当初、関西急行電鉄線と伊勢電気鉄道本線を直通する特急列車に投入され、名古屋～大神宮前間を1時間50分で結びました。その後、関西急行電鉄が参宮急行電鉄に合併された後も、引き続き特急運用に活躍しました。

戦後は、名阪特急（伊勢中川乗り換え）にも使用されましたが、後継車両の登場により、一般車へと改造されました。1959年（昭和34年）の名古屋線改軌の際には、標準軌に改造され、引き続き名古屋線で活躍しました。

1964年には、主電動機の出力増強改造が行われ、性能が向上しました。しかし、新型車両の登場により、次第に余剰となり、1970年代には養老線へ転出しました。

養老線では、1983年までに全車が引退し、廃車解体されました。

同系車と影響

1型電車のデザインは、その後の近鉄名古屋線系統の電車に大きな影響を与えました。モ6311形、モ6261形、6401系などが、その流れを汲む車両として知られています。

まとめ

関西急行電鉄1型電車は、近鉄名古屋線の発展に大きく貢献した車両です。その洗練されたデザインと高い性能は、当時の鉄道ファンを魅了し、現在でも語り継がれています。

「緑の弾丸」の愛称で親しまれた1型電車は、近鉄名古屋線の歴史を彩る名車として、その名を永遠に刻んでいます。

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