闇の左手

書籍紹介: 『闇の左手』

『闇の左手』（やみのひだりて、英語原題：The Left Hand of Darkness）は、アーシュラ・K・ル＝グウィンによって1969年に発表されたSF小説です。この作品は、1970年にネビュラ賞とヒューゴー賞を受賞し、二つの権威ある賞を同時に受賞するダブルクラウンを達成したことでも知られています。

作品の背景

本作は「ハイニッシュ・ユニバース」という広大な宇宙観の一部であり、ル＝グウィンの他の作品との関連も強いです。特に『ロカノンの世界』から引き継がれる未来の歴史が背景にあります。この作品は、両性具有な人達が生活する独自の世界を舞台とし、性別に基づく枠組みから自由な社会を描くことによって、フェミニストSFの代表作とも称されています。

あらすじ

物語は、宇宙連合エクーメンがかつて植民地として支配していた惑星「冬」に使者を派遣することから始まります。この惑星に住む人々は両性を持ち、その特異な社会構造が展開されていきます。遺伝子操作の実験によって、彼らは両性具有となり、結果として攻撃的ではなく、戦争に至るような大規模な衝突は起こっていないことが、物語の中心テーマとなります。

主人公であるゲンリー・アイは、カルハイド王国の王との会談を希望しますが、彼が頼りにしていた宰相エストラーベンが王の信任を失い追放されることを知ります。極寒の「冬」において、追放は死を意味するため、アイは懸念を抱きつつ旅を続けます。彼はカルハイド王国と対立するオルゴレインという隣国を訪れることになります。そこで旧知のエストラーベンに再会し、彼から危険な状況にいると忠告を受けます。

その後、アイは派閥争いに巻き込まれて逮捕され、更生施設に送られる運命に。そこで再びエストラーベンによって救出され、二人は厳寒の氷原を越えてカルハイド王国への帰還を目指す旅が始まります。

評価

書評家の大森望は本作を「文化人類学的な手法を駆使して、異星社会の歴史と文化をリアルに構築した作品」と高く評価しました。この作品は、両性具有というテーマを通じて、人間の本質や社会構造について深く考察しており、多くの読者にも影響を与えています。

書誌情報

『闇の左手』は、小尾芙佐の翻訳で、日本語版が1972年に発表され、その後も再版されています。1977年にはハヤカワ文庫SFで刊行され、多くのSFファンに親しまれています。特に、フェミニストSFとしての評価が高いこの作品は、現代においてもなお多くの議論と関心を集めています。

関連項目

この作品は、フェミニストSFの文脈で語られることが多く、現代のジェンダー研究や社会学への影響も少なくありません。

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