阪堺鉄道浪花形蒸気機関車

浪花形（なにわがた）について

浪花形は、かつて阪堺鉄道に存在したタンク式蒸気機関車の名称で、この名称は公式なものではなく、識別のために便宜上付けられたものです。1890年代の日本の鉄道事情を反映し、特異な設計を持ち合せています。

歴史的背景

阪堺鉄道が設立されるにあたり、1885年にドイツのホーエンツォレルン機関車から、計4両の機関車が発注されました。これらは「浪花」「住江」「吾妻」「大江」と命名され、段階的に製造されました。機関車の形式自体は特に標準化されておらず、各機関車は製造番号で識別されました。興味深いことに、製造過程で1両が海難事故に遭遇したため、その詳細は全く不明です。

この機関車は、車軸配置が0-4-0(B)、重量が16トンで、固定軸距は2032mm、単式2気筒の飽和式ウェルタンク機関車として設計されています。阪堺鉄道の特殊な条件により、軌間は838mmであり、これは他の路線では見られない独特なものでした。外見は路面機関車のスタイルを取り入れ、動輪を覆うスカートが特徴的であり、炭庫や水タンクの配置もユニークです。

南海鉄道への譲渡

1897年には、阪堺鉄道が南海鉄道に譲渡されるにあたり、機関車は838mmから1067mmに改軌され、その後、南海鉄道に引き継がれました。ここでは、元の名前を保ちながらも、5形としてカテゴライズされました。しかし、これらの機関車は動輪径の拡大に伴う駆動系への負担から早期に廃車となってしまいました。具体的には、1904年から1905年にかけて順次廃車処分が行われ、最終的に汽車製造を経由して八幡製鉄所へと譲渡されました。

八幡製鉄所での使用

八幡製鉄所では、機関車は新たに番号が付け替えられ、使用されていました。1921年にはさらなる改番が行われ、1937年の形式図には新たな番号も記載されています。それぞれの機関車には運転室の更新が施され、オリジナルの炭庫は撤去され、新たに運転台の背部に炭庫を増設するなどの改造が行われました。この改造によって機関車の形状が大きく変わったと考えられ、八幡製鉄所では「重箱」と呼ばれることもありました。

残りの2両については、1938年から翌年にかけてさらなる改造が行われ、新たな番号が付けられることとなりますが、これらはほぼ完全に新造されたものとなっています。

主要諸元

阪堺鉄道時代の浪花形の主な仕様は以下の通りです：

• - 全長：5862mm
• - 全高：3442mm
• - 軌間：838mm
• - 車軸配置：0-4-0(B)
• - 動輪直径：864mm
• - 弁装置：ジョイ式
• - シリンダー（直径×行程）：280mm×400mm
• - ボイラー圧力：10.5kg/cm²
• - 火格子面積：0.51m²
• - 全伝熱面積：32.5m²
• - 整備重量：16.3t
• - 水タンク容量：1.82m³
• - 燃料積載量：0.36t

このように、浪花形は日本の鉄道史において重要な位置を占めており、当時の技術とデザインの融合を示しています。

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