阪急320形電車

阪急320形電車について

阪急320形電車は、1935年に阪急電鉄が宝塚線の利便性向上を目的に導入した通勤形電車です。この形式は、宝塚線専用車両としては新製された初めてのもので、長年にわたって多くの利用客を支えてきました。320形の投入は、宝塚線の「小型車天国」を確立させる重要な出来事となりました。

車両の概要

320形電車は1935年4月に運行を開始し、梅田から宝塚までの急行運転を33分で実現するために設計されました。川崎車輌により、320号から331号までの12両が製造され、急行仕様として特化されました。

車体は神戸線用の900形を縮小したデザインで、全鋼製であり、長さ約15メートル、幅は約2.35メートルの両運転台車として仕立てられました。運転台側には行先方向幕、助士台側には尾灯が備わり、屋根には通風器を装備しています。座席はロングシートで設計されており、袖仕切りの形状も特徴的です。

主な機器と性能

主電動機にはゼネラル・エレクトリック社製の芝浦SE-107を4基搭載し、制御器は電空カム軸式のPC-5を採用しています。駆動方式は吊り掛け式で、ギア比は28:58に設定されており、高速性能が求められていました。台車は川崎車輌製K-12であり、この形式は多くの点で性能の向上が図られています。

運用に関する歴史

320形は、急行運用に使用されることを目指して設計され、運行開始当初は梅田から宝塚までの運行に投入されました。特に加速性能においては、他の形式に劣らない性能を示し、多くの乗客から支持されました。

また、1947年にはギア比が改定され、さらなる性能向上が図られました。1952年には、今津線に転出し、他形式との編成に対応したことで柔軟な運用が可能となりました。

能勢電気軌道への譲渡

1964年以降、能勢電気軌道での運用が開始され、彼らの需要に応える形で改良が施されました。1966年には本格的な運行を開始し、旧型の木造車両はすべて廃止されました。これにより320形は能勢電の古参車両の地位を確立し、編成の組成も多様化しました。

後の展開と廃車

1970年代に入ると老朽化が進行し、新型車両への置き換えが開始されます。1986年には500形とともにさよなら運転が行われ、同年内に廃車となりました。最後に保存された328号は1992年に解体され、320形の歴史は終わりを迎えました。

まとめ

阪急320形電車は、通勤型電車として宝塚線の発展を支え、ながらく親しまれた存在でした。この車両の登場は、阪急電鉄の歴史において重要な位置を占めており、鉄道ファンにとっても特別な意味を持つ通りの一つです。

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