阪急550形電車

阪急550形電車の概要

阪急550形電車（はんきゅう550がたでんしゃ）は、かつて京阪神急行電鉄が運営していた阪急電鉄の通勤形電車である。この車両は1948年と1951年に合計16両が製造され、戦後の宝塚線の輸送力を向上させるために設計された。阪急における数少ない二段上昇窓を持つ車両であり、阪急が設立した子会社ナニワ工機によって作られた最初の車両であった。

製造の背景

第二次世界大戦の終結後、阪急電鉄は多くの故障車や戦災車を抱えていたため、新たな車両の製造が急務であった。550形は、そのような背景の中で登場した戦後初の新式車両であり、運輸省の私鉄標準規格に基づき設計された。これにより、運転台や側窓は使い勝手が考慮された設計となっている。

車両の仕様

550形は1948年12月に最初の15両（550 - 564）が製造され、以降の阪急の新型車両はナニワ工機で製造されるようになった。1951年には1段下降窓を持つ565号が追加製造され、阪急にとって最後の小型車両となった。

この車両は運輸省規格型B'型に準拠した半鋼製の車体を有し、側窓は2段上昇窓が採用されている。 架線電圧の上昇に伴い、車体の改造も行われたが、基本的なデザインは戦後の合理化の影響を受けている。550形は全長約15.8メートル、幅約2.54メートルで、小型車としては最大のサイズを誇っていた。座席配置はロングシートであり、収容人数は40名であった。

主な機器

この車両には82kWの主電動機が搭載されており、性能向上を図る過程で600形からの部品が流用されている。電装品にはゼネラル・エレクトリック社製の機器が使用されており、後のモデルにも応用されることとなった。また、ブレーキシステムも日本エヤーブレーキ社製が用いられ、安全面での配慮がなされている。

運用の歴史

550形は、宝塚線や箕面線で運用されていた。特に宝塚線では、混雑緩和に寄与し、増強された輸送力で多くの通勤客を支える役割を果たした。1952年からは、急行から普通列車まで様々な運用が行われ、新しい車両の導入により混雑の解消が実現された。この車両は特に急行運用に広く使われ、1960年代のダイヤ改定では小型車の運用が再編され、主に普通列車に使用された。

阪急最後の小型車

550形の多くは、1963年のダイヤ改定で神戸線に転出され、宝塚線に残ったのは一部の車両のみであった。その後、昇圧対応工事の対象から外れたことから、1969年に宝塚線の昇圧前にすべて運用を離脱した。最後まで残った550形は、装飾が施されて「さよなら運転」が実施された後、全車が廃車となった。

保存に関する情報

550形電車の中で、550号はアルナ工機で保存されていたが、年数が経つにつれて保存状態が悪化したため、運転台部分のみの保存に縮小された。2021年には、大阪府豊能郡の吉川八幡神社に移送され、同様に保存されている他の鉄道車両と共に展示されている。

552号や553号は解体を免れたが、現在は現存していない。これらは戦後の混乱期に製造され、当時の鉄道史を語る上で貴重な存在であると言える。

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