阪急710系電車

710系電車の概要

710系電車は、1950年に京阪神急行電鉄によって導入された電車であり、効率的な運用を追求するために設計されました。この電車は、阪急電鉄の標準車体寸法に基づいて製造され、特に京都線に合わせた仕様になっています。710系電車は1953年までにナニワ工機によって14両が製造されました。

車体の設計

第二次世界大戦後、京阪神急行電鉄は異なる線区の規格の違いを統一する必要がありました。この車両は、神戸線用の810系とともに阪急標準車体寸法を採用し、全長19,000mm、全幅2,750mmというサイズを持っています。これにより、運用の効率が向上しました。窓の構造は一段下降窓が採用され、窓の配置は京都線の100形に準じています。

710系と810系の間にはいくつかの相違点があり、710系は窓枠が車体色と同色で塗装され、標識灯の配置も異なるなど、京都線の慣例に従っています。初期の車両は固定クロスシートが採用されていましたが、最終的に製造された一部の編成ではロングシートが採用されました。また、最終製造分の718-768号は製造途中で810系に変更され、他の仕様が異なる車両として落成しました。

主要機器の構成

710系は、新京阪鉄道時代からの慣例に従い、電装品は東洋電機製造製を使用しています。主制御器は600V・1500Vの複電圧に対応しており、全線でその特性を発揮することができます。主電動機は810系と同じ170kW×4の仕様ですが、最終増備車の一部では150kW×4の主動機が使用されています。

台車と振動対策

710系の715-765号両編成は新設計の扶桑金属工業製のウィングばね式台車を装着しています。この台車は乗り心地の向上を図るために設計され、特に716-766号と717-767号の編成はさらに改良されました。1956年のノンストップ特急運転開始後は、特急の乗り心地を改善するために振り替えが行われました。

ブレーキシステムの特徴

710系は台車シリンダー方式を採用したため、AMA-R・ACA-R自動空気ブレーキが使われています。これにより、運行の安全性が確保されています。

改造工事と運用の歴史

1956年からは蛍光灯化や正面扉への幌枠の取り付け、台車のオイルダンパー化など、快適性を向上させるための改造が行われました。1965年以降は特急運用から外れ、1971年には更新工事が実施され、元のクロスシート車はロングシート化されました。

710系は、登場以来主に京都線の特急用として運用されましたが、1964年に2800系が登場したことで特急運用から外れ、その後は本線急行や普通列車運用に活用されました。1970年代には、千里線や嵐山線への転用も行われましたが、1981年からは徐々に廃車が進み、1983年には全車両が運行を終了しました。

710系電車は、その長い歴史と改良を経て、京阪神急行電鉄において重要な役割を果たしました。

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