防壁条約

防壁条約について

防壁条約（ぼうへきじょうやく）は、スペイン継承戦争における重要な合意を指し、特にオランダとイギリスとの間で締結された一連の条約を含みます。この条約は、オランダがその防衛を強化し、フランスからの脅威に対抗する手段を提供しました。まず、これらの条約における「防壁」とは、南ネーデルラントに位置する主要な要塞群を指しており、オランダ軍が駐留することによって設けられた防衛の最前線を意味します。

第一次防壁条約

最初の防壁条約は、1709年10月29日にグレートブリテン王国とオランダ連邦共和国との間で締結されました。この契約では、オランダはイングランドによるプロテスタントのハノーファー家の継承を確約し、その見返りにイギリスが南ネーデルラントにおける防壁の整備を助けることを約束しました。具体的には、フュルネー、ニーウポールト、および他の11の地域に基地が設置されました。この条約は、1698年のレイスウェイク条約に基づくもので、オランダ軍に特定の要塞での駐留を認める内容でした。

第二次防壁条約

次に1713年1月29日に締結された第二次防壁条約では、前回の協定を受けて要塞の数が縮小されました。この条約では、フュルネー、イーペル、トゥルネーなどの合計10か所が対象となり、オランダ軍がそれらの要塞に駐留する権利が保障されました。イギリスは、どのような状況になったとしてもオランダの防衛権を確保することを交渉しました。この内容は、1714年に結ばれたラシュタット条約にも反映されています。

第三次防壁条約

1715年11月15日には、三度目の防壁条約が締結され、オランダ軍は再び要塞に対する駐留の権利を得ました。フュルネーやイーペルなど5つの主要な要塞に駐留することが決定され、さらにプロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム1世がオランダに上ゲルデルンの都市を譲渡することも含まれていました。

防壁条約の影響

防壁条約によって分かったことは、神聖ローマ皇帝カール6世がオーストリア領ネーデルラントに対して影響力を持たないという事実でした。この状況はオーストリアを不満にさせ、オランダ軍の駐留費用がオーストリア領から支払われることへの反発も呼び起こしました。この支払いは、マリア・テレジアが拒否するまで続きました。

1740年から1748年にかけての戦争では、フランス軍がオランダ軍の駐留する要塞のいくつかを容易に占拠し、防壁の脆弱性が顕在化しました。また、1756年にはオーストリアとフランスが同盟を組むことにより、条約の意義が薄れていくことになりました。1781年には皇帝ヨーゼフ2世が一方的に条約を廃止する決定を下しました。

このように防壁条約は、オランダとイギリスの関係、さらにはヨーロッパの力関係を大きく変える結果を生み出しました。その後の国際関係においても、この条約が持つ意義は無視できないものでした。

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