防疫給水部

防疫給水部について

概要

防疫給水部（ぼうえききゅうすいぶ）は、大日本帝国陸軍に設置された部隊で、主に疫病の予防と浄水の供給を目的としたものです。この部隊は、自然に存在する病原体に対する防疫活動に加えて、生物兵器からの防護もその重要な任務としていました。さらに、軍医学校と連携し、生物兵器や化学兵器に関する研究開発も行っていました。

組織構成

防疫給水部は各軍や師団の下に編成されましたが、平時には存在しない組織でした。戦時にのみ臨時に動員されるため、必要に応じて編成されるのです。たとえば、第14師団の防疫給水部は再編成され、師団野戦病院の防疫給水班として縮小されることもありました。独立した野戦防疫給水部も運用され、軍直轄の部隊として活動しました。

部隊の具体例としては以下のものがあります。

• - 関東軍防疫給水部（通称：満洲第659部隊、所在地：平房） - 関東軍直属の部隊。
• - 防疫給水部本部（通称：満州第731部隊） - 石井四郎が創設した部隊で、「石井部隊」とも知られています。
• - 北支那防疫給水部（通称：甲第1855部隊、所在地：北京） - 北支那方面軍直属。
• - 中支那防疫給水部（通称：栄第1644部隊、所在地：南京） - 中支那方面軍直属。
• - 南支那防疫給水部（通称：波第8604部隊、所在地：広州） - 南支那方面軍直属。
• - 南方軍防疫給水部（通称：岡第9420部隊、所在地：シンガポール） - 南方軍直属。

各部隊は、軍医や衛生兵といった専門職の士官が、水質分析や薬品の取り扱いを行い、さらに一般的な業務は通常の兵士によって担われました。特に、関東軍防疫給水部本部などには研究部門があり、多くの民間医師が軍属として加わっていました。

装備

この部隊は、飲用水を浄化するための濾過機や、浄化した水を前線の部隊に供給するための輸送車両を備えていました。特に、石井四郎軍医によって開発された石井式濾水機は、主要な装備品として重宝されました。

活動及び影響

1942年6月3日には、朝日新聞に報道されたように、ペスト撲滅隊が組織され、涙ぐましい努力が続けられていました。このように、防疫給水部は、戦時における感染症対策の最前線で活躍し、その重要性を広く認識されています。

ドキュメンタリー

近年もその活動に光を当てたドキュメンタリーが放映されています。たとえば、2021年8月にNHK-BS1で放送された『感染症に斃れた日本軍兵士 マラリア知られざる日米の攻防』は、その戦歴や背景を考察しています。

参考文献

関亮著『軍医サンよもやま物語―軍医診療アラカルト』光人社、1997年。

このように、防疫給水部はその時代背景の中で、軍隊の衛生管理と疫病対策において重要な役割を果たしていました。

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