防空基幹船

防空基幹船（ぼうくうきかんせん）とは

防空基幹船、または略称の防空船（ぼうくうせん）は、日本陸軍が護送船団の航空攻撃から防御するために開発した特別な軍隊輸送船です。この船は、航空機に対する対空兵器を集中して装備することを目的としており、太平洋戦争の初期段階で重要な役割を果たしました。

背景と必要性

太平洋戦争が開戦する前、日本陸軍には軍隊輸送船の自衛武装が海軍ではなく陸軍の管轄となる決定がされていました。開戦時、日本陸軍は陸軍徴用船に対する自衛火器の運用を担うため、2個の船舶高射砲連隊を編成し、総計440門の火砲を配備しました。しかし、航空機に対抗する高射砲はごくわずかであり、上陸作戦時における連合軍の空襲に対する防御力は限られていました。このため、陸軍は特定の輸送船に対空火器を集中させて、護送船団全体を守るという新たな戦術を考案しました。

防空基幹船の設立

1941年8月9日、日本陸軍は「神州丸」を含む8隻の輸送船を防空基幹船として選定し、武装を施すよう指示しました。この選定には優れた船が中心に選ばれたものの、古い船も含まれ、多様な艦船が使われました。防空基幹船に標準的に装備されることになったのは、八八式七糎野戦高射砲や九八式二十粍高射機関砲などです。船首と船尾にはそれぞれ高射砲の組み合わせが設置され、実際の武装は船によって異なることが多かったようです。

戦闘での運用

太平洋戦争が勃発すると、防空基幹船はマレー作戦やフィリピン攻略作戦に参加しました。特に「佐倉丸」は、イギリス空軍の攻撃を受けた際に防戦しましたが、護送していた「淡路山丸」を守れず、自身も被害を受けました。これらの戦闘から得た教訓は、以後の運用に影響を与えました。

運用の変化とその後

最初の上陸作戦を終えた後、防空基幹船は単独での使用が減り、より一般の輸送船と同様に扱われるようになりました。呼称も段々と使用されなくなり、1942年3月のジャワ島上陸時には追加の高射砲装備を備えた輸送船も登場しました。1942年8月以降のガダルカナル島の戦いでは、すべての陸軍輸送船に高射砲が装備されるようになり、特定の船に対空火器を集中させる戦術は姿を消しました。

まとめ

防空基幹船は、太平洋戦争の中で独自の役割を果たしましたが、その運用スタイルは戦況によって変化しました。陸軍の要求に基づき、護送船団の安全を守るために開発されたこの特別な輸送船は、戦時中の日本の戦略を具現化した存在と言えます。

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