防空頭巾

防空頭巾とは

防空頭巾（ぼうくうずきん）は、第二次世界大戦末期の日本において、空襲の際に落下物から頭部や首筋を保護するために使用された頭巾です。また、頭髪を覆い、火災の際に髪が燃えるのを防ぐ役割も担っていました。

形状

防空頭巾は、肩や首を覆うように作られており、綿や木綿などの柔らかい素材を緩衝材として使用しています。これにより、落下物や破片が頭部に衝突した際の衝撃を和らげる効果が期待されました。ヘルメットのような硬い素材ではないため、防御力は限定的でしたが、水に濡らして被ることで、焼夷弾による火災の熱や火の粉から頭部を保護するのに役立ちました。

形状にはいくつかの種類があり、長方形の座布団の二辺を縫い合わせたようなものや、フードに肩まで覆うクッションがついたものなどが確認されています。着用する際には、首の後ろから伸びた紐を顎の下で結び、頭巾がずれないように固定しました。

歴史と役割

太平洋戦争末期、日本では制空権を失い、全国各地で空襲による被害が多発しました。特に軍事施設や政府機関が集中する都市部では、連日のように爆撃が行われ、市民は常に危険にさらされていました。防空法により、都市部の住民は避難が制限され、消火活動への参加が義務付けられるなど、状況はさらに悪化しました。このような状況下で、1943年頃から防空頭巾が利用されるようになりました。

落下してくる爆弾や焼夷弾の直撃を防ぐことはできませんでしたが、防空壕に退避した際、爆撃の衝撃で壕が崩落した際の土石の落下や、爆弾や高射砲弾の破片から身を守る効果が期待できました。主に女性や子供が着用し、児童や学生は登下校時に携帯し、空襲警報が発令されるとすぐに被って避難しました。

防空頭巾は、各家庭で衣類などを再利用して保護者が手作りしたため、現存するものには様々な模様や形状が見られます。これらは当時の人々の知恵と工夫の証であり、平和資料としても貴重な存在です。

現代の防災頭巾との関連性

防空頭巾は、現代の学校などで使用されている防災頭巾の原型とも言えます。防災頭巾は、戦後に開発された難燃繊維や不燃性の素材を使用し、耐熱性や軽量化、夜間避難時の安全性を高めるための反射テープの貼付など、様々な改良が加えられています。しかし、その基本的な形状は、かつての防空頭巾の形を受け継いでいます。

関連項目

空襲
地震
防災
サイレンスーツ - 防空壕に素早く着替えて移動できるように上下フードが一つになった服

外部リンク

防空頭巾（名古屋市「戦争に関する資料館」）
水戸市「水戸空襲資料」

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