阿史那歩真

阿史那歩真（あしな ぶしん）

阿史那歩真（生没年不詳）は、7世紀の唐代に活躍した西突厥の軍人であり、可汗（カガン）の称号を持つ人物です。彼の生涯は、当時の西突厥における権力闘争と、唐王朝の勢力拡大政策が複雑に絡み合った時代を背景に展開されました。

生涯

貞観6年（632年）、阿史那弥射（あしな みしゃ）が唐朝から奚利邲咄陸可汗（イルテベル・テュルク・カガン）の称号を授与され、莫大な贈り物を受けました。阿史那歩真は、阿史那弥射の族兄にあたり、自らも可汗となることを望んでいました。その野望を実現するため、彼は阿史那弥射の弟や甥など20数人を謀殺するという暴挙に出ます。これにより、阿史那弥射との間に深刻な対立が生じました。

貞観13年（639年）、阿史那弥射は配下の処月・処密の部落を率いて唐に亡命し、右監門大将軍の地位を与えられました。一方、阿史那歩真は遂に自立して咄陸葉護（テュルク・ヤブグ）を名乗りますが、多くの部族が彼に従わなかったため、その地位を他の者に譲り、自身は逃亡しました。その後、阿史那歩真も唐に入朝し、左屯衛大将軍に任じられました。

顕慶2年（657年）、高宗の命により、阿史那歩真は阿史那弥射と共に阿史那賀魯（あしな かろ）討伐に参加します。この功績により、阿史那歩真は継往絶可汗（けいおうぜつカガン）の称号を授与され、右衛大将軍・濛池都護（もうちとご）を兼任し、五弩失畢（ごどしつひつ）部落を統括することになりました。

龍朔2年（662年）、再び阿史那弥射と共に、䫻海道大総管（うんかいどうだいそうかん）の蘇海政（そ かいせい）に従って亀茲（きじ）を討伐します。ここで阿史那歩真は、以前からの野望を実現するため、蘇海政に対し「阿史那弥射が謀反を企んでいる」という虚偽の報告を行い、阿史那弥射を陥れて誅殺させました。この策略により、阿史那歩真は驃騎大将軍（ひょうきだいしょうぐん）の地位を得ました。

乾封年間（666年 - 668年）に阿史那歩真が死去すると、息子の阿史那斛瑟羅（あしな こくしつら）が後を継ぎました。

子

阿史那斛瑟羅

参考文献

『旧唐書』（列伝第一百四十四下 突厥下）
『新唐書』（列伝一百四十下　西突厥）
佐口・山田・護訳注『騎馬民族誌２正史北狄伝』（1972年、平凡社）

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