阿史那斛瑟羅

阿史那斛瑟羅（あしな こくしつら、拼音：Āshǐnà Húsèluó）は、7世紀に存在した西突厥の可汗であり、阿史那歩真の子として生まれました。彼の正確な生没年は分かっていません。唐朝からは右玉鈐衛将軍兼濛池都護・継往絶可汗、武周からは左衛大将軍・竭忠事主可汗・濛池都護・平西軍大総管といった地位を与えられています。

生涯

斛瑟羅は、唐の乾封年間（666年 - 668年）に父である阿史那歩真が亡くなった後、その地位を継承しました。彼は当初、歩利設（ボリ・シャド Bori šad）という官職に就いていました。当時の西突厥は、数年の間君主が不在であり、多くの部族が離散するという不安定な状況にありました。

垂拱年間（685年 - 688年）の初め、唐朝は斛瑟羅に右玉鈐衛将軍兼濛池都護の地位を授け、継往絶可汗の称号を授与し、五弩失畢部落を統率させました。これは、唐朝が西突厥の安定を図るために、斛瑟羅を支援したことを示しています。

武周の天授元年（690年）には、斛瑟羅は左衛大将軍に任命され、竭忠事主可汗に改封されました。さらに、濛池都護の地位も与えられました。しかし、斛瑟羅は刑罰の適用において厳格かつ冷酷であったため、民衆からは恐れられていました。

一方、突騎施（テュルギシュ）の烏質勒は、支配下の部族を大切にしたため、周辺諸国からの支持を集めました。そのため、斛瑟羅の勢力は次第に衰退していきました。

聖暦2年（699年）、武周は斛瑟羅を左衛大将軍兼平西軍大総管に任命し、自国の人々を鎮撫させようとしました。しかし、斛瑟羅の部族は烏質勒の勢力に圧倒され、弱体化していました。そのため、斛瑟羅は本国に戻ることを諦め、部衆6・7万人とともに中国内地に移り住むことを決意しました。彼の故地は、全て烏質勒に併合されることとなりました。

その後、斛瑟羅は長安で亡くなりました。彼の死後、息子の阿史那懐道が後を継ぎ、右武衛将軍となりました。

阿史那斛瑟羅は、激動の時代を生きた西突厥の可汗であり、唐朝や武周との関係の中で、その地位を維持しようと努めました。しかし、内政の失敗や周辺勢力の台頭により、最終的には故地を失い、中国内地に移り住むという結末を迎えました。彼の生涯は、当時の西突厥の政治状況や国際関係を反映していると言えるでしょう。

参考文献

『旧唐書』列伝第一百四十四下 突厥下
『新唐書』列伝第一百四十下 突厥下
* 佐口・山田・護訳注『騎馬民族誌２正史北狄伝』（1972年、平凡社）

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