阿寺断層

阿寺断層とは

阿寺断層は、岐阜県中津川市神坂から下呂市萩原町山之口に至る、全長約70kmに及ぶ活断層です。この断層は、主に横ずれ（左横ずれ）の動きを示す断層であり、活動度A級に分類されています。阿寺断層は、岐阜県と長野県にまたがる形で存在していましたが、2005年に長野県木曽郡山口村が岐阜県中津川市に編入されたことにより、現在ではほぼ全域が岐阜県内に位置しています。

阿寺断層の構造

阿寺断層帯は、複数の断層で構成されています。大きく分けて、北部と南部に区分され、それぞれ異なる特徴を持っています。

北部: 萩原断層

南部: 湯ヶ峰断層、小和知断層、阿寺断層、城ヶ根山断層、小川断層、柿坂断層、西上田断層、下呂断層、下呂西断層、宮地断層、野久保断層

これらの断層が複雑に絡み合い、阿寺断層帯を形成しています。

阿寺断層が形成した地形

阿寺断層は、岐阜・長野県境に位置する阿寺山地を形成した主要因の一つです。断層に沿って、川上川、付知川、加子母川、飛騨川が流れ、これらの河川は断層によって数kmから数十kmほど位置がずれています。中津川市加子母付近では、幅約2kmの断層帯が確認され、坂下地区や付知地区では、高さ十数メートルの段差が見られます。特に坂下地区では、異なる時期に形成された複数の河岸段丘が直線状にずれ、左横ずれと上下方向の変位が確認できます。

過去の活動と評価

阿寺断層帯は、北部と南部に分けて評価されています。

北部

平均活動間隔: 1,800 - 2,500年
最新活動時期: 3,400 - 3,000年前と推定
推定される地震規模: M6.8程度
30年以内の発生確率: 6 - 11%

南部

平均活動間隔: 約1700年
最新活動時期: 1586年（天正13年）の天正地震と推定
推定される地震規模: M7.8程度
30年以内の発生確率: ほぼ0%

2011年の東北地方太平洋沖地震後、北部の地震発生確率が引き上げられました。また、断層のずれの速度は、南部で2 - 4m/1000年（左横ずれ成分）とされています。北部のずれ速度は不明です。

過去の地震活動

北部の最新活動は、約3400年前から約3000年前の間と推定され、平均活動間隔は約1800年から2500年と考えられています。南部では、平均的な左横ずれ速度が約2 - 4m/1000年で、活動時には4 - 5m程度の左横ずれが生じたと推測されています。また、南部の最新活動は、1586年の天正地震とされており、恵那市上村川上流域では同時期に山体崩落が発生し、川が堰き止められて湖ができたことがわかっており、本断層の活動との関連性が示唆されています。

その他の断層帯

阿寺断層帯周辺には、佐見断層帯と白川断層帯がありますが、これらの断層帯については過去の活動に関する資料は得られていません。

まとめ

阿寺断層は、過去に大きな地震を引き起こしてきた活断層であり、今後も地震発生の可能性があるため、注意が必要です。特に北部では、30年以内の地震発生確率が比較的高いため、防災対策を講じることが重要です。

参考文献

地震調査研究推進本部: 阿寺断層帯
地震調査研究推進本部: 阿寺断層帯の長期評価について
道家涼介, 安江健一, 廣内大助 ほか, 「阜県中津川市加子母地区長洞における 阿寺断層帯中部の活動時期」 『活断層研究』 2014年 2014巻 40号 p.43-50, doi:10.11462/afr.2014.40_43, 日本活断層学会・活断層研究会
吉岡敏和、廣内大助、杉戸信彦、細矢卓志、眞柄耕治：阿寺断層帯，佐見断層および白川断層の古地震調査 産業技術総合研究所 活断層・古地震研究報告 第12号 （2012年）
小田切聡子, 島崎邦彦, 「歴史地震と起震断層との対応」 『地震 第2輯』 2001年 54巻 1号 p.47-61, doi:10.4294/zisin1948.54.1_47, 日本地震学会

関連項目

日本の断層一覧
天正地震
阿寺山地
坂下駅（断層崖をくぐるトンネルがある）
根尾谷断層（岐阜県の活動度A級の活断層）
* 跡津川断層（岐阜県の活動度A級の活断層）

もう一度検索