阿波おどり 鳴門の海賊

『阿波おどり 鳴門の海賊』

『阿波おどり 鳴門の海賊』は、1957年8月6日に公開された日本の長編劇映画で、制作・配給は東映が行っています。この映画は、1941年に東宝が製作した『阿波の踊子』のセルフリメイク版です。監督を務めたのはマキノ雅弘で、彼の独自の視点とスタイルを反映した作品となっています。

キャストと主要人物

本作には多彩なキャストが揃っており、主演は大友柳太朗が務めています。彼は「帰って来た男」を演じ、物語の中心的な役割を担います。その他のキャストには、藤田進（髭先生）、徳大寺伸（尺八先生）、丘さとみ（お光）、千原しのぶ（お市）などが名を連ねています。特に丘さとみの起用は話題となり、当時の東映社長・大川博がその容姿を理由に反対したエピソードがありますが、監督のマキノが彼女を強く支持し、撮影を進めることができました。

制作背景

本作の企画は、当時の企画部長である辻野力弥と製作部長の岡田茂によって進められました。キャスティングに関しても、彼らがすべてを決定しました。しかし、丘さとみの起用に反対の声が上がりました。大川社長は彼女の見た目が気に入らず、他の女優を起用するよう指示しました。これに対し、マキノ監督は丘を起用しなければ自ら制作から降りると主張し、その結果、丘が起用されることとなりました。この一連の経緯は、映画制作の現場における葛藤や様々な人間関係を示しています。

稽古と表現

撮影準備段階では、阿波踊りの稽古が特に重要視され、マキノは先斗町から芸者を呼び寄せて特訓を行いました。食事を抜いた厳しい稽古にもかかわらず、出演者たちは努力を重ねました。これは、彼らの役柄に対する真剣な取り組みを反映しており、特に丘さとみはその後もマキノ作品に多く出演し、「東映城のお姫さま」として人気を得ることとなります。

マキノ監督と俳優との関係

公開後、マキノ雅弘の弟であるマキノ光雄が病に倒れ、彼がマキノに「東映の若手役者を育ててほしい」とお願いする場面がありました。この件は、兄弟の絆や、映画制作における人材育成の重要性を感じさせるものとなっています。また、マキノは当初、中村錦之助を主演に考えていたものの、大友柳太朗が主役を奪ったとの裏話もあり、当時の俳優たちの実力や地位の変動も興味深いものです。

考察

映画『阿波おどり 鳴門の海賊』は、その制作背景やキャストの選定過程、そして稽古に至るまで、様々な人間模様が織り交ぜられています。舞台となる阿波地方の文化を尊重しつつ、作品自体は多くの視聴者に愛され続けてきました。今日では、この映画を通じて、日本の映画産業の歴史や当時の文化を感じ取ることができます。

このように、『阿波おどり 鳴門の海賊』は、ただの映画にとどまらず、当時の社会背景や人々の思いが詰まった作品となっており、観る者に深い感動を与える要素が詰まっています。

もう一度検索