阿波根昌鴻

阿波根昌鴻：沖縄の平和を求めた不屈の闘士

阿波根昌鴻（あはごん しょうこう、1901年3月3日 - 2002年3月21日）は、20世紀の沖縄を代表する平和運動家です。彼は、戦後のアメリカ施政権下における沖縄で、米軍による土地の強制接収に断固として反対し、反基地運動を先導しました。彼の生涯は、沖縄の基地問題と深く結びついており、その活動は多くの人々に影響を与え、沖縄の反戦運動の象徴的な存在となっています。

生い立ちと信仰

1901年、阿波根昌鴻は沖縄県国頭郡本部町に生まれました。17歳でキリスト教の洗礼を受け、無教会主義の思想に強い影響を受けました。成人後は伊江島へ渡り、結婚。1925年にはキューバへ移民し、その後ペルーへ移住しましたが、1934年に日本へ帰国しました。

戦争と土地闘争

帰国後、阿波根は京都（一燈園）や沼津で学び、伊江島に戻りました。デンマーク式農民学校の建設を目指しましたが、その学校は沖縄戦で失われ、最愛の一人息子も戦死するという悲劇に見舞われました。敗戦後、伊江島の土地の約6割が米軍に強制接収された際、彼は先頭に立って反対運動を展開しました。「全沖縄土地を守る協議会」の事務局長や「伊江島土地を守る会」の会長として、1955年から1956年にかけて沖縄本島で非暴力の「乞食行進」を行い、米軍による土地強奪の不当性を訴えました。この活動は、1956年夏の島ぐるみ土地闘争に大きな影響を与えました。

返還後の闘い

伊江島補助飛行場内に土地を所有していた阿波根は、1972年の沖縄返還後も日本政府との賃貸借を拒否し続けました。彼は、日本政府による米軍用地強制使用の不当性を明らかにするため、内閣総理大臣や沖縄県収用委員会を相手取り軍用地訴訟を提起。さらに1991年には「反戦地主重課税取り消し訴訟」を起こしましたが、1998年に敗訴が確定しました。

平和への貢献

1984年、阿波根は「わびあいの里」計画のもと「やすらぎの家」を建設し、基地撤去のために闘いながら、自身の自宅敷地内に反戦平和資料館「ヌチドゥタカラの家」を自費で開設しました。1984年12月8日に開館したこの資料館は、県内外から訪れる人々に戦争の愚かさと平和の尊さを伝え続けています。また、彼は生協活動にも力を注ぎ、1969年には生活協同組合を設立しましたが、1992年に解散しました。

1998年には、阿波根の活動を取り上げたドキュメンタリー映画『教えられなかった戦争・沖縄編 阿波根昌鴻・伊江島の戦い』が制作されました。

その生涯

阿波根昌鴻は、2002年3月21日、肺炎のため沖縄協同病院で死去しました。享年101歳でした。彼の生涯は、沖縄の平和運動の歴史において、重要な足跡を残しています。彼の不屈の精神と平和への強い思いは、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。

著書

『命こそ宝―沖縄反戦の心』（岩波書店、1992年）
『米軍と農民 沖縄県伊江島』（岩波書店、1973年）
『人間の住んでいる島－沖縄・伊江島土地闘争の記録』（写真記録 自費出版、1982年）

関連文献

亀井淳『反戦と非暴力―阿波根昌鴻の闘い』（高文研、1999年）
真鍋和子,相原宏『沖縄反戦地主・こころの源流―フォト・ドキュメント阿波根昌鴻』（ふきのとう書房、1999年）
佐々木辰夫『阿波根昌鴻―その闘いと思想』（スペース伽耶、2003年）
真鍋和子著『シマが基地になった日－沖縄伊江島二度めの戦争』（金の星社、1999年4）
大西忠保写真・文章・編集『あはごんしゅぎ』（Photos舎、2002年）
千田夏光, 池原秀明, 相原宏著『素顔の反戦地主 : 沖縄の心をともに生きる』（ふきのとう書房、1996年）
安藤正人著『アジアのアーカイブズと日本－記録を守り記憶を伝える』5章阿波根昌鴻さんのメッセージを未来に伝えるために（岩田書院、2009年）
わびあいの里発行機関誌「花は土に咲く」

関連項目

銃剣とブルドーザー

外部リンク

伊江島・平和資料館「ヌチドゥタカラの家」紹介ページ
財団法人「わびあいの里」紹介ページ

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