阿片戦争 (1943年の映画)

映画『阿片戦争』の概要

『阿片戦争』（あへんせんそう）は、1943年1月14日に公開された日本の映画で、製作は東宝が手掛けました。この作品は、清国を侵略した英国の阿片戦争をテーマにしていますが、実際には1921年に公開されたD・W・グリフィス監督の『嵐の孤児』のストーリーを基にしたものです。映画の中では、盲目の少女とその姉が激動の時代に巻き込まれる姿が描かれています。

特徴と撮影技術

当時、日本は英国との戦争状態にあり、このため映画のキャストは日本人のみで構成され、中国人やイギリス人の役を演じることになりました。また、作品の冒頭に使用されるインドのシーンは、ヘンリー・ハサウェイ監督の『ベンガルの槍騎兵』から流用され、終盤の炎上する広東のシーンは、『シカゴ』（1927年）の素材を無断で転用しました。

撮影は特別に沼津市に大規模なオープンセットが建設され、多くのエキストラを用いたシーンが展開されましたが、数が足りないため、エキストラの手に笠を持たせて走らせるという工夫がされました。特撮技術も駆使され、ミニチュアによる海戦や都市景観が描かれています。特に合成を担当した向山宏は当時の技術の限界を考慮しながら、クライマックスシーンでの効果を追求しました。

ストーリー展開

映画は約100年前の海上からスタートします。英国印度総督府は、中国へのアヘン輸出を進めるためにチャールズ・エリオットとその弟で海軍将校のジョージ・エリオットを広東に派遣しました。アヘンによる混乱が広東市を覆う中、広東阿片監視局の局長、許沈伯もアヘンに溺れていました。

その時、強硬な立場を取った林則徐が皇帝の命令で広東へ派遣されます。彼はアヘンの取り締まりに乗り出し、初めは許沈伯と対立しますが、次第に要人としての役割を果たしていきます。林則徐がアヘンを回収しようとする一方、その取り締まりを阻む英国側との対立が深まります。

盲目の少女、麗蘭とその友人愛蘭との関係も物語の中心をなしています。愛蘭は麗蘭の視力を取り戻すために奔走し、混乱の中で麗蘭とはぐれてしまいますが、林牙梁に助けられます。林則徐は英側との交渉を進め、一時的な和平を図りますが、アヘンの密売者との衝突や火事が発生し、物語は次第に緊迫した展開へと進んでいきます。

キャストとスタッフ

主演を務めたのは市川猿之助（林則徐）で、原節子（愛蘭）や高峰秀子（麗蘭）なども参加しています。映画はマキノ正博が監督し、脚本は小国英雄が手掛けました。特技担当には円谷英二が名を連ね、スタッフの努力が結実した作品となっています。1981年にはVHSで再発売されるなど、今でも多くの人々に愛されています。

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