阿部嘉昭

阿部嘉昭（あべ かしょう）氏は、1958年8月2日生まれの日本の映画・サブカルチャー評論家、そして詩人です。

生涯と経歴

東京都大田区堤方（現在の同区中央8丁目）に生まれた阿部氏は、神奈川県立湘南高等学校を卒業後、1977年4月に慶應義塾大学法学部法律学科へ進学します。大学在学中の1977年7月には町田市へ転居しました。中学時代には詩作に取り組んでおり、後にその頃の作品を「ボブ・ディランや鈴木翁二の影響を受けたものだった」と振り返っています。慶應義塾大学法学部を1982年3月に卒業しました。

大学卒業後、阿部氏はまずオーディオ・ビデオ業界紙の編集者として社会人のキャリアをスタートさせます。1985年には編集プロダクション「ジャックポット」に入社し、様々なメディアでビデオ紹介記事の執筆を担当しました。翌1986年には西友に入社し、映画の制作、企画、宣伝といった業務に深く関わることになります。1990年にはキネマ旬報社に入社し、映画専門誌の世界に身を置きました。

研究・教育活動と評論

1994年にキネマ旬報社を退社した後は、フリーランスの映画評論家として活動を続けながら、大学の非常勤講師としても教壇に立ち始めます。1999年からは立教大学で講義を担当し、2002年から2003年には日本大学芸術学部放送学科、2005年から2006年には早稲田大学第二文学部でも教えました。2007年には立教大学特任教授に就任し、教育・研究者としての地歩を固めます。

2012年には北海道大学文学研究科准教授に着任。ここでは映画・サブカルチャー研究と詩歌論を主な専攻分野として、研究と教育に力を注ぎました。2019年3月には、北海道大学に提出した博士論文「黒沢清、映画のアレゴリー」により博士（文学）の学位を取得。同年4月からは同大学文学院の教授を務め、多くの学生を指導しました。2024年3月末に北海道大学を定年退官し、名誉教授の称号を得ています。

詩人・詩論家としての活躍

阿部氏は、評論家や研究者としてだけでなく、詩人としても高く評価されています。2014年には詩集『ふる雪のむこう』が第48回北海道新聞文学賞を受賞。さらに2015年には詩論集『換喩詩学』で第6回鮎川信夫賞を受賞するなど、その詩的、詩論的な才能は文壇でも認められています。2017年8月には、杉中昌樹編集の雑誌「ポスト戦後詩ノート7号」で、詩人・詩論家としての活動が全頁にわたり特集されるなど、現代詩の分野においても重要な存在として認識されています。

現在の活動

北海道大学退官後、2024年4月からは京都情報大学院大学の教授として新たな教育の場に移り、引き続き後進の指導にあたっています。

主な著作

阿部嘉昭氏は、映画、サブカルチャー、詩など幅広い分野で多数の著作を発表しています。主なものとしては以下が挙げられます。

『北野武vsビートたけし』
『野島伸司というメディア』
『AV原論』
『松本人志ショー』
『日本映画が存在する』
『精解サブカルチャー講義』
『実戦サブカルチャー講義』
『椎名林檎vsJポップ』
『成瀬巳喜男 映画の女性性』
『換喩詩学』（第6回鮎川信夫賞受賞）
* 『黒沢清、映画のアレゴリー』（博士論文をもとに書籍化）

これらの単著に加え、田中眞澄氏らとの共編による『成瀬巳喜男 透きとおるメロドラマの波光よ』、日向寺太郎氏との共編による『映画作家黒木和雄の全貌』など、共編著も複数あります。

教育者としては、教え子の中から、バンド「ハルカトミユキ」のメンバーである福島遥氏や歌人の望月裕二郎氏といった文化人が生まれています。

阿部嘉昭氏は、映画・サブカルチャー評論、詩作、そして大学での教育・研究活動という多角的な視点から、現代日本の文化状況を深く掘り下げ、その知見を多くの人々に伝えています。

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