鮎川信夫賞

鮎川信夫賞とは

鮎川信夫賞は、戦後日本の現代詩を牽引した詩人、鮎川信夫の偉大な業績を記念して創設された文学賞です。現代という時代、そして社会の現実と深く向き合い、優れた表現をもって紡ぎ出された詩集や詩論集を対象に、その功績を顕彰することを目的としています。この賞は、鮎川信夫現代詩顕彰会によって運営されています。

創設とその背景

本賞は、現代詩の専門誌として知られる「現代詩手帖」（思潮社）の創刊50周年という節目の年を迎えたことを記念する事業の一つとして、2009年6月に設立されました。戦後詩史において重要な位置を占める鮎川信夫の名前を冠することで、その精神を現代に引き継ぎ、新しい時代の詩の営みを鼓舞しようとする意図が込められています。

選考プロセスと授与

受賞作品の選考は、委嘱された複数の選考委員による合議制で行われます。慎重な議論を経て、最も時代性を捉え、かつ詩的な強度を持つ作品が選出されます。選考結果は、例年2月末から3月初めにかけて発表されるのが通例でした。受賞者には、その栄誉を称える正賞として賞状が授与されるとともに、副賞として金50万円が贈られます。

選考対象作品

選考の対象となるのは、原則として前年の1月からその年の12月までの1年間に発表された詩集、および詩論集です。詩論集については、より広義の文芸評論も対象に含まれる場合があり、詩という表現形式を巡る多角的な思索や批評活動全体に光を当てる姿勢が見られます。

選考委員

創設以降、この賞の選考を担ってきた委員には、日本の現代詩壇・文学界を代表する顔ぶれが揃っています。歴代の主な選考委員としては、辻井喬（第4回まで）、岡井隆（第5回まで）、北川透、吉増剛造といった詩人や批評家が名を連ねていました。

受賞作品と賞の行方

第1回には谷川俊太郎の詩集や稲川方人・瀬尾育生の詩論集が受賞するなど、回を重ねるごとに多くの優れた作品が選出され、話題となりました。これまでに、朝吹亮二、井坂洋子、藤井貞和、野村喜和夫、四元康祐、坪井秀人、松浦寿輝、高橋睦郎、岸田将幸、阿部嘉昭、蜂飼耳、山内功一郎、荒川洋治、伊藤浩子、暁方ミセイ、宗近真一郎、中尾太一、四方田犬彦といった詩人や批評家が受賞しています。

しかしながら、この鮎川信夫賞は、2018年度に開催された第10回をもって、残念ながらそれ以降の実施や発表が確認されていません。その歴史は10回をもって一旦途切れている状況です。現代詩の重要な賞の一つであっただけに、その動向が惜しまれています。

この賞は、現代詩、特に鮎川信夫が追求したような、時代や社会と切り結ぶ詩の力を再認識させるとともに、多様な表現活動を奨励する重要な役割を果たしました。もしばしば担いました。その受賞歴の中に見て取ることができました。

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