阿部市郎兵衛

近江商人「紅屋」阿部市郎兵衛家

阿部市郎兵衛家は、近江国能登川を拠点とした近江商人であり、屋号を『紅屋』と称しました。江戸時代後期には麻布問屋として発展し、『能登川の阿部』家は、『五個荘の山中』家、『高宮の堤』家と共に、『近江三福』の一つと称されるほど繁栄しました。

阿部家の特徴：本家・分家による共同経営

阿部家の特筆すべき点は、本家と分家が乗合店として共同で事業を展開していたことです。この形態は近江商人としては珍しく、明治維新後も阿部一族として事業を継続する基盤となりました。一族が結束して事業に取り組むことで、それぞれが経済界で重要な役割を果たすことができたのです。

阿部市郎兵衛家の歴史

以下に、阿部市郎兵衛家の主要な人物を紹介します。

阿部奥右衛門：阿部市郎兵衛家の家祖とされています。
阿部市郎兵衛 (4代)専祐：江戸時代中期に活躍。3代市郎兵衛の子であり、娘に養子を迎えて阿部市太郎家を創設しました。
阿部市郎兵衛 (5代)常省：（明和4年（1767年）-天保6年（1835年））麻布商として紅染め業を始め、「紅市」の名を広めました。延べ売り（掛け売り）販売を行い、利子収入を得て財を築きました。
阿部市郎兵衛 (6代)浄廉：（寛政8年（1796年）-安政5年（1858年））麻布や海産物などを扱い、北海道、奥羽地方へ販路を拡大し、豪商としての地位を確立しました。
阿部市郎兵衛 (7代)蓮永：（天保8年（1837年）-明治37年（1904年））金巾製織（現在の東洋紡績の前身の一つ）や近江銀行の創業者の一人として活躍しました。
阿部市郎兵衛 (8代)浄幸：（生年不詳-明治35年（1902年））7代市郎兵衛の養子。
阿部シゲ：市郎兵衛家9代目当主。

阿部一族

阿部家からは、多くの有能な人物が輩出されました。

阿部市太郎家：4代市郎兵衛の娘婿が創設。
阿部市太郎 (2代)：阿部市郎兵衛 (5代)の子。
阿部市太郎 (3代)：2代市太郎の次男であり、金巾製織の創業者の一人。
阿部房次郎：3代市太郎の娘婿。東洋紡績社長、江商（後の兼松江商（現兼松））の創業者の一人。
阿部市次郎：5代市郎兵衛の子。
阿部彦太郎：市次郎の長男。「阿部彦将軍」と呼ばれました。
阿部市三郎：5代市郎兵衛の子。
阿部市三郎 (2代)：2代市太郎の子。
阿部利兵衛：5代市郎兵衛の子。
阿部周吉：第3代利兵衛家当主。
阿部元寿：第4代利兵衛家当主。
* 阿部俊吉：第5代利兵衛家当主。東洋綿花（トーメン）役員。第二次世界大戦前には海外に駐在。

まとめ

阿部市郎兵衛家は、近江商人としての成功だけでなく、一族の結束力と共同経営によって、多くの有能な人材を輩出しました。その功績は、近江経済の発展に大きく貢献したと言えるでしょう。

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