阿部正権

阿部 正権の生涯と藩政の歴史

はじめに

阿部正権（あべ まさのり）は、江戸時代後期において重要な役割を果たした大名であり、武蔵国の忍藩および陸奥国の白河藩を統治していました。彼は忠秋系阿部家の9代目にあたります。正権の生涯は多くの困難と葛藤に満ちており、彼自身が直接的に藩政に関与することが困難だったため、周囲の影響を受けながらも藩の運営に取り組んでいきました。

幼少期と家督の継承

正権は、武蔵国忍藩の8代藩主である父・阿部正由の次男として生まれました。彼の幼名は銕丸と称され、文化5年（1808年）のわずか3歳の時に父が急死したため、家督を相続することになりました。しかし、正権は幼少期から病弱であり、藩政には積極的に取り組むことができませんでした。これにより、彼の母・泰寿院や本家の福山藩主である阿部正精が藩政の運営を代行する必要がありました。

藩政の難題

文化13年（1816年）、正権は美濃国・伊勢国・尾張国及び東海道の河川の修復助役に任命されました。このプロジェクトの実施には藩内の財政的支出が必要不可欠であったため、多くの村々に対して御用金を課する結果となりました。しかし、この施策は藩の財政状態を一層悪化させ、藩士や領民の生活を困難にする要因を作りました。文政元年（1818年）になると、藩内の足軽65名が未払いの手当や借金の返済延期を求め、江戸藩邸を訪れて強訴する事件が発生しました。このような事件は、藩政の難しさと財政の逼迫を物語っています。

領知替えと最後の時

文政6年（1823年）3月24日、幕府から阿部家に対して忍藩および白河藩への領知替えが命じられました。長きにわたって忍藩を治めてきた阿部家にとって、この移封は大きな変化を意味しました。同年の10月6日、正権は江戸藩邸にて亡くなり、将軍家へ御目見を果たす前にその生涯を閉じました。そのため、正式な官位は授与されておらず、家督は従兄弟の正篤に譲られることになりました。

系譜

正権の家族背景を探ると、父は阿部正由、母は側室の泰寿院であり、養子には松平頼興の子である阿部正篤がいました。正権の家系は、江戸時代の大名家としての長い歴史を持ち、彼自身の短い人生の中でも多くの課題に直面していました。

まとめ

阿部正権の歴史は、病弱であったために藩政の実権を握ることができなかった大名としての苦悩を大いに感じさせます。藩内の財政問題や家族の背景、さらには移封に至る過程など、彼の生涯は江戸時代の大名家の一側面を浮き彫りにしています。彼の死後も、家族や藩の運営は続きましたが、正権の時代に起きた問題は忘れられない教訓を残しています。

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