阿部良夫

阿部良夫：物理学者、そして新聞社社長としての生涯

阿部良夫（あべ よしお、1888年1月6日 - 1945年4月15日）は、明治から昭和にかけて活躍した日本の物理学者であり、北海タイムス社の社長を務めた人物です。

生い立ちと学歴

阿部は、1888年に阿部宇之八の長男として北海道札幌区に生まれました。北海道庁立札幌中学校から第一高等学校を経て、1912年7月に東京帝国大学理科大学理論物理学科を卒業しました。東京帝国大学では、物理学者の寺田寅彦に師事し、その日記や書簡にもたびたび登場するなど、薫陶を受けました。

研究者、教育者としての活動

大学卒業後、阿部は研究者、教育者として活動しました。1913年4月から8月までシーメンス・シュッケルト社（現・シーメンス）の技師を務め、1916年4月からは早稲田大学高等師範部講師、1920年4月からは早稲田大学高等学院教授として、科学哲学と科学史の研究に励みました。1923年10月に早稲田大学を辞職しています。

新聞社経営者としての転身

1925年、父の死去に伴い、阿部は北海タイムス社の理事に就任し、1927年には同社の社長となりました。新聞社経営の傍ら、1931年から1939年まで北海道帝国大学理学部物理学科で科学史を講義するなど、教育活動も継続しました。1941年には日本科学史学会創設の発起人の一人となり、日本の科学史研究の発展に貢献しました。

1942年11月、北海道新聞社発足とともに相談役となり、1945年4月15日に亡くなりました。実弟は北海道放送初代社長の阿部謙夫です。

主な著作・翻訳

阿部は、物理学、科学哲学、科学史に関する著作を多数発表しました。また、海外の科学書や論文の翻訳も手がけ、日本の科学界に貢献しました。

著書

『相対性理論』(1926年)
『科学雑話』(1926年)
『現代自然科学思潮』(1928年)
『物質論』(1932年)
『ニュートン自然哲学の数学的原理』(1935年)
『科学雑話 増訂』(1940年)

訳書

ハインリッヒ・ヘルツ『電波に関する論文集』(1915年)
『アインスタイン全集』第1-4巻(1922‐1924年)（石原純らとの共訳）
ニュートン『光学』(1940年)（堀伸夫との共訳）

参考文献

阿部宇之八伝記刊行会 編『阿部宇之八伝』阿部宇之八伝記刊行会、1933年。
渡辺一雄 編『北海道新聞社十年史』北海道新聞社、1952年。
高田誠二「阿部良夫の科学史学上の業績とその影響」『科学史研究』25巻158号74-82頁、日本科学史学会、1986年。

阿部良夫は、物理学者、教育者、そして新聞社社長として、多岐にわたる分野で才能を発揮し、日本の社会と文化に貢献した人物として記憶されています。

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