阿高黒橋貝塚

阿高黒橋貝塚（あだかくろはしかいづか）

阿高黒橋貝塚は、熊本県熊本市南区城南町阿高字東原に所在する、縄文時代中期から後期にかけての貝塚です。1916年（大正5年）に発見され、1980年（昭和55年）に国の史跡に指定されました。佐賀市の東名遺跡と並び、西日本最大級の縄文貝塚として知られています。

概要

熊本平野の南部には、緑川とその支流が広がる平坦な地形が形成されています。この沖積地を囲む丘陵地帯およびその麓は、全国的に見ても有数の縄文時代の貝塚密集地帯です。

阿高黒橋貝塚は、その支流の一つである浜戸川が丘陵地帯から沖積低地に流れ出す場所に位置し、右岸丘陵麓部の阿高地点と、現河川敷を隔てた左岸の黒橋地点という2つの中心部が存在します。

1916年の耕地整理事業によって阿高貝塚が発見され、多数の土器・石器とともに、50体以上の縄文人の人骨が確認されました。特に、熟年女性とみられる人骨の左腕にアカガイ製の貝輪2個が嵌められていた例は注目されています。

1972年（昭和47年）7月には、豪雨による浜戸川の氾濫の影響で、新たに黒橋地点の貝塚が発見されました。その後、1973年（昭和48年）と1977年（昭和52年）に試掘調査が実施され、両地点が縄文時代中期から後期前半にかけて継続して営まれた一遺跡であり、時代が下るにつれて阿高貝塚地点から黒橋貝塚地点へと中心地がやや移動していることが明らかになりました。

出土物

阿高黒橋貝塚からは多量の土器が出土しており、特に太い沈線で文様が描かれ、縄目文様を全く欠く阿高式土器は、九州地方における縄文時代中期の標式土器とされています。

貝層中からは、マガキやハマグリなど37種類の貝類、フグやマダイなど15種類の魚類のほか、イノシシ、シカ、イヌ、ヘビ、カエルなどの動物の骨も確認されています。これらの出土物は、当時の生産活動や食料事情を解明する上で非常に重要な資料となります。

同遺跡で発見された特異な遺物としては、阿高貝塚地点で発見された大型のカキ殻を加工して作られた仮面があります。同様の貝殻製の仮面は、福岡市西区の桑原飛櫛貝塚など、北部九州の中後期の縄文遺跡でも見られますが、本州の遺跡では確認されておらず、九州独特の文化を示すものと考えられています。

参考文献

熊本市教育委員会

関連項目

縄文時代の遺跡一覧
日本の貝塚一覧
九州・沖縄地方の史跡一覧

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