アカガイ

アカガイ（赤貝）

アカガイ（学名: Anadara broughtonii、英名: Bloody clam）は、フネガイ目フネガイ科に属する二枚貝の一種です。内湾の潮間帯や浅海の砂泥底に生息し、殻には42本前後の放射肋があります。血液が赤いことが特徴で、これは呼吸色素であるエリスロクルオリンによるものです。エリスロクルオリンはヘモグロビンと同様に鉄ポルフィリンを補欠分子団としており、鉄分を含むために赤く見えます。

注意点として、A型肝炎ウイルスを保有する個体が存在するため、多くの国で輸入が禁止されています。

生態

アカガイは、大きくても殻長12cm、殻高9.6cm程度で、42～43本の放射肋を持ちます。主な分布域はピョートル大帝湾から黄海にかけての区域で、日本、朝鮮半島、中国、台湾、極東ロシアの水深0～60mの砂泥底に生息しています。

ヒトとの関わり

食用

アカガイは食用として、主に寿司や刺身に使われます。独特の風味と食感が楽しまれています。ただし、市販されている「赤貝の缶詰」の多くは、サルボウガイ (Anadara kagoshimensis) が使用されていることが多いです。近年では、中国や韓国からの輸入物も多く流通しています。

A型肝炎ウイルスのリスクがあるため、加熱不十分な場合は感染の可能性があります。専門家以外が採取したものを生で食べるのは避けた方が良いでしょう。

楽器

歌舞伎の黒御簾音楽では、アカガイの貝殻をこすり合わせて、カエルの鳴き声を再現することがあります。貝殻の音色を楽器として利用する、ユニークな利用法です。

歴史

『古事記』には、八十神に大火傷を負わされた大穴牟遅神を救うために、神産巣日命が遣わした蚶貝比売（キサカイヒメ）が登場します。このキサカイヒメはアカガイ、蛤貝比売（ウムキヒメ）はハマグリだと考えられています。神話の時代から、アカガイの殻の粉を蛤汁で溶いて火傷に塗布するという治療法が存在したと考えられており、食用だけでなく、殻のカルシウムが薬としても用いられていたことが推測できます。

主な栄養素 (可食部100gあたり)

タンパク質: 13.5g
脂質: 0.3g
鉄: 5mg
亜鉛: 1.5mg
ビタミンB12: 59.2μg

アカガイは、タンパク質や鉄分、亜鉛、ビタミンB12などの栄養素を豊富に含んでいます。特にビタミンB12の含有量は多いです。

アカガイと名のつく他の二枚貝

サツマアカガイ (Paphia amabilis): マルスダレガイ科スダレガイ属

参考文献

五明紀春 監修 『食材健康大辞典』時事通信社、2005年

関連項目

寿司
* キサガイヒメ・ウムギヒメ

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