院尊

院尊（いんそん）

院尊（1120年 - 1198年）は、平安時代後期から鎌倉時代初期にかけて活躍した仏師であり、院派に属していました。父は仏師の院覚です。

略歴

院尊は興福寺で仏像制作に携わり、興福寺講堂の大仏師を務めました。1183年の興福寺本僧綱補任では、最高位である法印に任じられていたことが記録されています。東大寺が焼討ちで被害を受けた後の復興事業では、大仏の光背の制作を指揮するなど、重要な役割を果たしました。

また、近江国において源氏調伏のため、高さ五丈（約15メートル）にも及ぶ巨大な毘沙門天像を建立しましたが、この行為が源頼朝の不興を買ったと伝えられています。

作品

確実な現存作品は確認されていませんが、長講堂阿弥陀三尊像は後白河院との関係から、院尊の作である可能性が指摘されています。

長講堂阿弥陀三尊像の特徴

脇侍の足: 両脇侍が蓮台から片足を下ろしている点が特徴的です。これは天平彫刻に範をとったものと考えられ、当時の古典への関心の高さを示唆しています。
天衣の表現: 脇侍の天衣が、正面で両肩から胸部にかけての縁に沿って、肉身や条帛に重なるように掘り出して取り付けられています。着衣や装身具を別々に制作する技法は鎌倉時代以降に見られますが、この作品においては、その効果は限定的です。しかし、当時の仏師の現実への興味やこだわりといった意識の変化の兆しを見ることができます。

院尊の作品は、古典的な要素を取り入れつつも、新しい表現を模索する姿勢がうかがえます。その作風は、鎌倉時代の彫刻の発展に影響を与えたと考えられています。

参考資料

三宅久雄『日本の美術459 鎌倉時代の彫刻 仏と人のあいだ』至文堂、2004年。ISBN 4-7843-3459-9。

関連項目

明円

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