陰騭録

『陰騭録』（いんしつろく）は、中国明代の袁了凡（えん りょうぼん）が著した善書で、『了凡四訓』とも呼ばれます。袁了凡が、自身の宿命観を乗り越え、運命を自ら創造していく体験を書き記した書物です。

陰騭の意味

“陰騭”という語は、『書経』洪範篇に由来し、「天が人知れず下民の生活を安定させ、住居を整える」という意味を持ちます。この言葉には、目に見えない力が人々の生活を支えているという思想が込められています。

あらすじ

代々学者の家に生まれた袁了凡は、幼名を「学海」といい、当初は医者を志していました。しかし、ある時現れた孔という老人から、将来の職業や寿命を予言されます。予言通り科挙を目指し、その後の人生も孔老人の予言通りに進むことから、彼は宿命論に傾倒していきます。

役人となった袁了凡は、以前から教えを請いたかった雲谷禅師を棲霞山中に訪ねます。禅師にこれまでの人生を話すと、宿命論に囚われた袁了凡の姿勢を厳しく叱責し、人は自らの力で運命を切り開けると説きます。この言葉に感銘を受けた袁了凡は、禅師の教えに従い、徳を積み、善行を積極的に行い、多くの陰徳を積むようになります。すると、孔老人の予言は次第に当たらなくなり、寿命は53歳と言われていたにも関わらず74歳まで生き、子宝に恵まれないという予言に反して一子をもうけました。袁了凡は名を改め、息子に自らの人生を語り聞かせたのです。

この物語は、運命は固定されたものではなく、自らの行いによって変えられるということを示唆しています。善行を積み重ねることで、運命を好転させることができるという教えは、多くの人々に希望を与え続けています。

参考資料

『立命の書「陰騭録」を読む』（安岡正篤 著、致知出版社）

外部リンク

陰騭録 : 倭訳 - 国立国会図書館デジタルコレクション

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