陳泰 (明)

陳泰（ちん たい）は、明代に活躍した官僚であり、軍人としてもその名を残しました。字（あざな）は吉亨（きっこう）、号は拙庵（せつあん）と称しました。彼の生涯は、波乱に満ちたものであり、その功績と不遇が交錯する複雑なものでした。

1403年、陳泰は陳封の子として生まれました。幼少の頃、母方の祖父である曹氏の家で育てられたため、一時的に曹姓を名乗っていました。1423年、科挙の郷試において首席で合格し、その才能を世に示しました。その後、1427年には安慶府学の訓導に任じられ、官僚としての道を歩み始めます。

1437年、陳泰は江西道監察御史に抜擢され、貴州巡按を務めました。当時、麓川の乱を討伐する官軍の遠征において、現地の兵士が道案内として徴用されましたが、敗戦を喫します。その際、功績を横取りしようとした者たちを糾弾し、兵士たちの命を守りました。その後、山西巡按に転じますが、百官の俸給が低く汚職が横行していたことから、昇給を求める上奏を行うも、それは叶いませんでした。

1441年には、「連年の災害は廷臣の責任である」と訴え、大臣を糾弾するよう進言。英宗がこれを受け入れたことで、御史らが吏部尚書らを弾劾しました。その後、山東巡按として赴任しますが、1444年には四川按察使に抜擢され、鎮守都御史との対立も経験します。1447年には、武官の専横を弾劾したことで、逆に罪に問われ、一時的に投獄されるという不遇も味わいました。

1449年、郕王朱祁鈺が監国となると、陳泰は赦免されて官に復帰し、于謙の推薦で紫荊関の守備に就きます。しかし、エセン・ハーンの侵入を防ぐことができず、再び死刑を宣告されましたが、景泰帝の恩赦により事官として復帰。総兵官に従い、関隘の築造に尽力しました。1450年には大理寺右少卿に抜擢され、白羊口を守備。その後、右僉都御史として軍務にも携わり、同時に姓を陳に戻しました。1452年には保定六府巡撫を兼任し、翌年には倒馬関提督も兼ねるなど、その手腕は高く評価されていました。

1454年には、運河の治水工事を監督し、180里の溝を浚渫、決壊箇所を修復、堰を築造するなど、大規模な工事を数ヶ月で完了させました。1456年には蘇松巡撫に転じますが、翌年には讒言により官を罷免され、広東按察副使に左遷されます。その後、父母の死去に伴い辞職し、喪に服しました。

1462年、四川で反乱が発生すると、陳泰の再任を望む声が高まり、左僉都御史として官に復帰し、四川巡撫を務めます。1464年には右副都御史に進み、漕運総督として淮揚四府巡撫を兼任するなど、その活躍は多岐に渡りました。1465年に致仕し、1469年に67歳でその生涯を閉じました。

陳泰は、その生涯において、官僚として、軍人として、また治水工事の責任者として、多様な役割を担い、数々の困難に立ち向かいました。彼の著書である『拙庵集』25巻には、その思想や経験が記録されています。彼の人生は、明代の官僚社会の光と影を映し出す鏡であり、その足跡は後世に語り継がれるべきものです。

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