陳邦瞻

陳邦瞻（ちん ほうせん、生年不詳 - 1623年）は、明代末期の官僚であり、字を徳遠と称した。瑞州府高安県の出身である。

生涯

1598年（万暦26年）、科挙の進士に合格し、官僚としての道を歩み始めた。最初に任じられたのは南京大理寺の評事であり、法曹界でキャリアをスタートさせた。その後、南京吏部郎中を経て、地方官として浙江参政に転出した。さらに福建按察使、福建右布政使、河南右布政使と、各地の要職を歴任した。河南では彰徳府などを担当し、水田1000頃を開墾する大規模な灌漑事業を実施した。また、滏陽書院を設立し、学問を奨励した。この功績により、官吏や民衆によって生祠が建てられ、陳邦瞻の善政が称えられた。その後、河南左布政使に転じ、右副都御史として陝西巡撫を兼任した。

1620年（万暦48年）、上林の土官である黄徳勲の弟、黄徳隆とその子の黄祚胤が反乱を起こし、田州土酋の岑懋仁に投降した。岑懋仁は彼らを受け入れ、上林を襲撃して黄徳勲を殺害し、その妻子や財産を略奪した。この時、明朝の守備兵は状況を把握していなかったため、黄徳勲は病死したと偽り、黄祚胤を後継者とするよう朝廷に願い出た。しかし、陳邦瞻は岑懋仁の反乱を朝廷に報告し、討伐を主張した。同年、泰昌帝が即位すると、陳邦瞻はその功績により兵部右侍郎に抜擢され、両広の軍務を総督し、広東巡撫を兼任することになった。これにより、軍を率いて岑懋仁を討伐し、反乱を鎮圧した。また、海賊の林莘老が1万人以上の勢力を集め、沿岸地域を侵略していた際には、陳邦瞻がこれを鎮圧し、勢力の拡大を防いだ。さらに、ポルトガル人が青州に拠点を築き、内陸への侵攻を企てていた際には、その拠点を焼き払い、彼らの野望を打ち砕いた。その後、北京に召還され、工部右侍郎に任じられたが、着任しないまま兵部右侍郎に転任、さらに兵部左侍郎に昇進した。

1622年（天啓2年）5月、陳邦瞻は四事を上奏し、天啓帝の意にそぐわない内容であったため、叱責された。その後、戸工二部侍郎を兼任し、軍需の監督に専念することになった。1623年（天啓3年）、在任中に死去した。その功績を称え、尚書の位が追贈された。陳邦瞻は官僚としてだけでなく、文人としても才能を発揮し、馮琦の『宋史紀事本末』を増補したほか、『元史紀事本末』や『荷華山房集』などの著書を残した。

人物

陳邦瞻は、民政に明るく、地方官としては灌漑事業や教育機関の設立に尽力し、民衆の生活向上に貢献した。また、軍事面においても優れた手腕を発揮し、反乱の鎮圧や海賊の討伐に成功した。しかし、朝廷に対して直言を厭わない性格が災いし、失脚する場面もあった。彼は、官僚としての責任を果たす一方で、文人としての教養も深く、歴史書の編纂や著作を通して後世に影響を与えた人物と言えるだろう。

参考文献

* 『明史』巻242 列伝第130

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