陸スイ

陸倕（りく すい）

陸倕（470年 - 526年）は、中国南朝の斉から梁にかけての時代に生きた官僚であり、文人です。字（あざな）は佐公（さこう）。呉郡呉県（現在の江蘇省蘇州市）の出身です。南朝斉の竟陵王、蕭子良（しょう しりょう）に才能を認められ、彼の周囲に集まった文人グループ「竟陵八友」の一人として名を連ねました。

生涯

陸倕は、斉の太常卿（たいじょうけい）であった陸慧曉（りく けいぎょう）の子として生まれました。幼い頃から学問に励み、特に文章の才能に秀でていました。17歳の時には、揚州の秀才に推挙されています。竟陵王蕭子良が鶏籠山（けいろうざん）に西邸（せい邸）を設け、当時の優れた文人たちを集めた際、陸倕もその一人として参加しました。その後、議曹従事参軍（ぎそうじじさんぐん）として召し出され、廬陵王（ろりょうおう）法曹行参軍（ほうそうこうさんぐん）に転じました。

梁の時代に入り、天監（てんかん）初年には、安成王（あんじょうおう）蕭秀（しょうしゅう）の下で右軍外兵参軍（うぐんがいへいさんぐん）となり、後に主簿（しゅぼ）に転じました。さらに臨川王（りんせんおう）蕭宏（しょうこう）の下に転じ、驃騎東曹掾（ひょうきとうそうえん）を務めました。武帝（ぶてい）の命により「新漏刻銘（しんろうこくめい）」の刻字を選定し、その文章の美しさで広く知られるようになりました。その後、太子中舎人（たいしちゅうしゃじん）に転じ、東宮（とうぐう）の書記を管掌しました。また、武帝の命により「石闕銘記（せっけつめいき）」を作成し、朝廷に献上しました。太子庶子（たいししょし）・国子博士（こくしはかせ）に転じましたが、母親が亡くなったため、職を辞して喪に服しました。喪が明けると、中書侍郎（ちゅうしょじろう）となり、給事黄門侍郎（きゅうじこうもんじろう）・揚州別駕従事史（ようしゅうべつがじゅうじし）を歴任しました。病のため解任を願い出て、鴻臚卿（こうろきょう）に転じました。その後、入朝して吏部郎（りぶろう）となり、人材選抜の職務に携わりました。

晋安王（しんあんおう）蕭綱（しょうこう）の下に転じ、雲麾長史（うんきちょうし）・尋陽郡太守（じんようぐんたいしゅ）・行江州府州事（こうしゅうふしゅうじ）として地方に出向しました。公務上の事件により一時免官されましたが、後に中書侍郎・司徒司馬（しとしば）・太子中庶子（たいしちゅうしょし）・廷尉卿（ていいけい）を歴任しました。再び太子中庶子となり、給事中（きゅうじちゅう）・揚州大中正（ようしゅうだいちゅうせい）の任を加えられました。また、中庶子・中正のまま国子博士に任じられました。さらに、中正のまま太常卿を代行しました。普通7年（526年）に亡くなりました。享年57歳。彼の著作を集めた『陸倕文集』20巻は、当時広く読まれました。

人物・逸話

陸倕は、邸宅内に2間の茅屋を建て、外界との交流を絶って昼夜問わず読書に励む生活を数年間続けました。

書物を一度読むと暗誦することができたと言われています。ある時、『漢書（かんじょ）』を人に借りた際、五行志（ごぎょうし）4巻を紛失してしまいましたが、暗記していた内容を書き写して返却したところ、抜け落ちている箇所はほとんどなかったと伝えられています。

幼い頃、母方の祖父である張岱（ちょうたい）に非常に可愛がられ、張岱は周囲の人々に「この子はわが家の魏舒（ぎじょ）のようだ」と常々語っていたそうです。

任昉（じんほう）と親交が深く、「感知己賦（かんちこふ）」を作って任昉に贈りました。任昉が御史中丞（ぎょしちゅうじょう）に就任した際には、殷芸（いんうん）、到漑（とうがい）、劉苞（りゅうほう）、劉孺（りゅうじゅ）、劉顕（りゅうけん）、劉孝綽（りゅうこうしゃく）らと共に任昉の昇進を祝う宴会に参加し、その宴を「龍門の遊（りゅうもんのゆう）」と呼びました。

子女

陸纘（りく さん）：四男。幼い頃から聡明で、10歳で経典に通じ、童子奉車郎（どうじほうしゃろう）となりましたが、早世しました。
陸緬（りく めん）：外見が陸倕に瓜二つだったと伝えられています。

伝記資料

『梁書（りょうしょ）』巻27 列伝第21
『南史（なんし）』巻48 列伝第38

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