御史中丞

御史中丞（ぎょしちゅうじょう）とは

御史中丞は、古代中国の官職であり、官吏の監察を主な職務としていました。その起源は秦の時代に遡り、前漢、後漢、三国時代を通じてその役割は変化を遂げました。

前漢における御史中丞

前漢時代には、御史大夫を補佐する二人の御史丞のうち、宮中に詰める方を御史中丞と呼びました。この役職は秩禄千石であり、蘭台の図籍秘書を管理し、地方官である刺史を監督する役割を担っていました。さらに、侍御史を統率し、公卿からの上奏文を受け取り、その内容を調査して不正を弾劾する権限を持っていました。

当初、御史中丞は御史大夫の管轄下にありましたが、後にその統属から離れ、独立した地位を確立しました。成帝の時代には、御史大夫が改称され大司空となると、その次官として大司空長史と共に御史中丞が置かれ、職務内容は以前と変わりませんでした。しかし、哀帝の時代には大司空が再び御史大夫に戻り、また御史長史と共に次官として置かれました。その後、御史大夫が大司空に再変更された際には、次官として大司空長史のみが置かれ、御史中丞は御史台の長となり、御史長史と改称されました。この御史台の管掌権を失わせる措置は、当時復権した王莽の意向によるものと推測されています。

後漢における御史中丞

後漢では、光武帝が御史長史を御史中丞と改称し、少府に所属させました。ただし、これは名目上の所属であり、実際には皇帝に直属していました。御史中丞の下には、治書侍御史2名と侍御史15名が配置され、非法行為の監察と弾劾、公卿の上奏文の受理と文書の違反に対する弾劾を行いました。後漢の時代になると、御史中丞は皇帝直属の監察官として、より強い権限を持つようになりました。

また、光武帝は朝廷の集会において、御史中丞、司隷校尉、尚書令の三つの官職に対して単独の席を設けることを定めました。これにより、都ではこれら三つの官職を「三独座」と呼ぶようになりました。これは、御史中丞が後漢において非常に重要な役職であったことを示しています。

三国時代における御史中丞

三国時代にも、御史中丞の官職は引き続き設けられました。例えば、徐庶は曹操、曹丕、曹叡の三代に仕え、その間に御史中丞に任じられました。また、蜀漢に帰順した孟獲も、御史中丞の官職に就いたことが記録されています。このことからも、三国時代においても御史中丞が重要な役職であり続けたことがわかります。


御史中丞は、時代ごとにその役割と組織を変えながらも、官吏の監察という重要な役割を担い続けました。その存在は、古代中国の政治機構における不正防止と官吏の綱紀粛正に不可欠なものであったと言えるでしょう。

参考資料

『漢書』巻19上百官公卿表上
『続漢書』（『後[[漢書]]』合刻）百官志三
『三国志』ちくま学芸文庫8巻P279
『宋書』百官志

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