陸奥長沼氏

陸奥長沼氏

陸奥長沼氏（むつながぬまし）は、かつて陸奥国会津郡南東部を治めていた家系であり、居城は鴫山城があった。長沼氏の起源は藤原秀郷の子孫にさかのぼり、平安時代から鎌倉時代にかけて源頼朝に従った長沼宗政が初代とされる。彼は奥州合戦の戦功により、陸奥国会津郡南山（現在の長江荘）を与えられたとされる。

出自と移動の背景

長沼氏の惣領家は南北朝の乱において下野国長沼から会津郡田島（長江荘）へ移住したとの情報があるが、その後の移動歴については不明確だ。やがて、15世紀中頃には下野国皆川へと移り住み、この時期以降の長沼氏の統治に関しては明確な系譜が欠如している。

長沼氏と周辺諸勢力

中世の会津地方には長沼氏の他にも、蘆名氏や山内氏、河原田氏などが存在し、これらの家は「会津四家」と称されていた。長沼氏は、当初は蘆名氏と友好的な関係を築いており、特に15世紀半ばには蘆名盛詮の反乱を支援し、宇都宮氏との戦闘で領地を回復するなど、共闘関係にあった。

しかし、長禄の変以降、長沼氏は蘆名氏に対して半従属の関係を持つようになり、その後も両家の間で対立や協力が繰り返されることとなる。特に、長沼政義が蘆名と共に下野国に侵攻し戦う時期があり、明応4年（1495年）には旧領の回復を果たすなど、最盛期を迎えた。だが、その興隆は長続きせず、永正6年（1509年）の片角軍萱の戦いで大敗を喫し、下野の領地を失うこととなった。

さらなる争いと従属

永正18年（1521年）には蘆名盛高の死去によって家督を継いだ盛滋が早世し、その弟の盛舜が引き継ぐ。相続に再び問題が生じ、反盛舜勢力との抗争が続く中、長沼豊後守実国もその一環になり、しばらく小競り合いが続いた。その後、天文元年（1532年）に降伏を余儀なくされたものの、完全に服従するわけではなかったようで、長沼氏の対立は次代の盛氏に引き継がれた。

永禄4年（1561年）には蘆名氏に降伏することとなり、長沼実国が蘆名との関係を強化して南会津での影響力を拡大させる。同時に、伊達輝宗との関係も築くことで、後の戦略に影響を及ぼしていく。

蘆名氏の滅亡とその後

戦国時代が進む中、蘆名氏は内部の対立に苦しむ。盛氏が権力を握っても、やがて息子たちが早世し、家督を巡る争いが巻き起こる。最終的に、天正17年（1589年）に行われた摺上原の戦いでの大敗により、蘆名氏は滅亡した。

蘆名氏滅亡の直後、長沼盛秀は即座に伊達政宗のもとに赴いて会津平定に尽力。会津の他の地方勢力を叩き込み、一定の領土を確保した。しかし、天正18年（1590年）に急死し、その後の奥州仕置により会津地方を伊達から取り上げられてしまう。これにより、長沼氏としての存在はほぼ終焉を迎え、盛秀の子たちはそれぞれ米沢に移住した。

長沼氏の子孫と仙台藩士

盛秀の子孫は、その後も仙台藩士として活躍し、長沼福国は召出家として昇進し、700石の藩士となった。また、次男の盛重は手水番に任じられ、1500石の家老へと昇進する。盛重の家系は明治維新まで続き、古文書の伝承も行われた。三男の九郎左衛門は中堅官僚としての道を歩み、長沼氏の名は幕末までその名を留めることとなった。

長沼氏の壮大な歴史は、地域の政治的変遷を反映しつつ、会津地方の戦国時代の一角に名を刻むことになった。

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