陸羽

陸羽の生涯と業績

陸羽（りく う、733年 - 804年）は、唐代の中国に生まれた文筆家で、特に茶に関する知識を集約した著作『茶経』で知られています。彼は、茶道の祖とも称され、近代日本の思想家である岡倉覚三（天心）によって「茶道の鼻祖」と評されています。陸羽の出自は不明であり、捨て子であった可能性があり、一般には733年に生まれ、湖北省天門市近くの竟陵で育ったとされています。彼の姓である「陸」は、彼を拾った僧侶の姓を受け継いだとも、易の卦に由来するといった説があります。

幼少期と経歴

陸羽は幼い頃に、竟陵龍蓋寺の智積禅師に拾われます。彼は容貌が美しく、話すときに吃音があったものの、非常に雄弁だったと言われています。智積禅師は彼に仏教の経典を学ばせようとしましたが、陸羽は儒教を選択することを強く望みました。そのため、智積は彼に牧牛などの厳しい労働を課しましたが、陸羽は隠れて竹で牛の背中に字を書いていたと言われています。

彼は後に逃げ出し、役者の一座に参加。そこで諧謔な文章を書く才を見出されます。天宝年間には、竟陵の長官李斉物に見出されて書を教わり、彼との交流は陸羽にとって知的な橋渡しの役割を果たしました。その後、孤児である彼が知識ある人々と交わるきっかけを与えたのは、李斉物でした。

陸羽は、友人たちとの宴会でも思うところがあれば席を外し、雨や雪、さらには危険を顧みず約束を守る誠実さを持っていました。彼は常に「精行倹徳の人」を理想とし、自らの行動と言葉に誇りを持っていました。

隠遁生活と著作

756年には、安禄山の乱を避けて、他の知識人たちと共に江南へと逃れます。その後、760年頃に湖州の苕渓に隠れ住むことになります。ここで彼は庵を作り、桑苧翁と名乗りながら数多くの著作に取り組みました。彼はこの時期に、僧の釈皎然と親密な関係を築き、自然の中を独り歩き回ることを楽しんだと伝えられています。

59歳の時、陸羽は『茶経』という著書を完成させ、14年にわたる茶の研究の成果をまとめました。さらに10年後の780年には、『茶経』の補足版を著したとされています。また、湖州刺史の顔真卿とともに『韻海鏡源』の編纂にも加わるなど、その文才は広く評価されました。しかし、御史大夫の李季卿の冷遇を受け、『毀茶論』という著作を発表することにも至りました。

伝記と資料

彼に関する記録は、主に『新唐書』や『茶経』の注釈書に見られます。これらの文献は彼の思想や文化に対する貢献を裏付けるものとなっており、近代日本においても高く評価されています。

参考文献

• - 陳舜臣『茶の話　茶事遍路』
• - 成田重行『茶聖陸羽　茶経を著した偉人の生涯』
• - 布目潮渢・中村喬編訳『中国の茶書』
• - 熊倉功夫・程啓坤編『陸羽「茶経」の研究』

陸羽の業績は、茶道のみならず、中国の文化や文献に多大な影響を与え続けています。

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